79/君は誰よりも憂うひと - �� ページ30
「こっちは七夕祭のだよ」
「あ〜、なるほどな。学院祭が終わったらすぐそっちの準備が始まるもんな……ん？足元の紙袋はなんだ？」
衣更くんが私の足元へ視線を落とすのに釣られて、私も足元を見た。
机に凭れるようにして紙袋がひとつ置いてあった。中はカラフルな布の切れ端たちがつまっている。
「ええと、布のサンプル……みたいなもの」
「へ〜〜。切れ端ばっかみたいだけど、どう使うんだ？」
「布の種類によって質感とか厚さとか伸縮性が違ってて……デザイン案考えるときにその場で確かめるために遣ってるよ」
衣更くんはなるほどなぁと唸って、「やっぱすごいよ、お前」と言ってくれた。
特別すごいことをしている訳ではないけれど、彼の顔からも声からもお世辞ではないことが伝わってきて、自然と顔が綻んだ。
「お、笑ったな」衣更くんがにこりと愛嬌よく笑顔を見せた。「お前、やっぱり笑ってると可愛いよ。いつも見せてくれてもいいのに♪」
「そう、かな」
「うん。……あ！いや、いつも可愛いんだけど笑ってると余計に……って、これは、断じて変な意味じゃなくて！」
ひとりであわあわと慌てる衣更くんに笑ってしまう。
わかってるよ、衣更くんがいい意味で言ってくれたこと。
そう告げると衣更くんはホッとしたように頬を緩めた。
「私、『顔が死んでる』って言われがちだから、うれしい。ありがとう」
「顔が死んでる、か〜……うーん……それは違うと思うけどなあ」
「違う？」
首を傾げると、衣更くんは腕を組んで小さく唸った。
「たしかに、表情豊かではないけどさ。でも、感情がないわけじゃないじゃん？」
「ふふ、人間だもん。いちおう最低限の喜怒哀楽はあるよ」
「いや、そうじゃなくて。なんつうか……」
歯切れ悪く言ったあと、衣更くんは沈黙した。言葉を探しているようだった。
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凪湖(プロフ) - まりぽん。さん» はじめまして！コメントありがとうございます。お褒めの言葉とても嬉しいです。忘れた頃に覗きに来てくださるともしかしたら更新してるかもしれません！すみません…………！がんばります！ (2022年1月29日 23時) (
レス) id: 601054dbfe (このIDを非表示/違反報告)
まりぽん。(プロフ) - はじめまして。この作品で初めてケーキバースというのを知りました！話の構成や表現の仕方も素晴らしくてすごく面白いです！最近は更新なされていないみたいですが、一ファンとして応援しています！更新待っています！ (2021年9月5日 12時) (レス) id: 830f87a26c (このIDを非表示/違反報告)
凪湖(プロフ) - 蒸田。（むしだ）さん» はじめまして！コメントありがとうございます〜！伏線の貼り方等嬉しいお言葉本当に嬉しいです。伏線はかなり迷いながら張っているのでそう言って頂けて心底安心しました。私生活優先のため不定期の更新になりますがお付き合い頂ければ幸いです……！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ed70c08211 (このIDを非表示/違反報告)
蒸田。（むしだ）(プロフ) - はじめまして。カニバリズムやケーキバースというものを初めて知ったので、詳しく調べたうえで改めて一気読みさせて頂きました！！すっごく面白いです…！！私自身も陳腐な小説を書いているのですが、作者様の伏線の張り方に感動しました…。これからも頑張って下さい！ (2020年5月24日 8時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
凪湖(プロフ) - 初めまして。コメントありがとうございます。ケーキバースを気に入って頂けて嬉しいですo(^o^)o綺麗とのお言葉もありがとうございます。とても励みになります！レイ様も体調の方ご自愛くださいませ。 (2020年4月20日 15時) (レス) id: ed70c08211 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：凪湖 | 作成日時：2020年4月19日 2時
