63/無名の宝花 - �� ページ14
口をぽかんと開けたままの俺に、ま〜くんは苦笑した。
「そりゃあ、わかるよ。幼馴染だからな。お前が俺のことよくわかってるのと同じ。俺もお前のこと、わかってるつもりだから。それに、最近Aに避けられてる気がする〜って、らしくもなく落ち込んでたじゃん」
「『らしくもなく』は余計だよ。でも……そう。ふーん……」
「なんだ？ お前、嬉しそうじゃん」
「そう……？ うん。そうだね、嬉しい……のかも」
ま〜くんが俺のことを少しでもわかってくれてることも──Aと話せたことも。
きっと、嬉しいのだろう。だから、自然と口角が上がってしまうのだ。
1ヶ月前とは、大違いだった。
あの頃は、ま〜くんに置いていかれたような絶望的な気持ちでいたし、それから少ししてからAに避けられ初めてしょげてもいた。
「Aが『もう避けない』って約束してくれたんだよ」
「良かったじゃん。つうかホントに避けてたんだな〜？ 俺全然わかんなかったよ」
「すごくさりげなかったから、そりゃそうだと思うよ。元々あんまり関わってもなかったし……俺の自意識過剰って言われても変じゃないくらい微妙に避けられてた」
「へ〜。でも、Aは理由もなくそんなことする奴じゃないしなぁ……理由はなんだったんだ？」
「ま〜くんの言った通りAの事情だったみたい。詳しくは教えてくれなかった」
「そっかそっか……」
ん〜と伸びをひとつして、ま〜くんは椅子から立ち上がった。ニッと人好きのする笑みを浮かべる。
「よっし、帰るか！」
◆
結局。どうして避けられていたのかはわからずじまいだった。
『凛月くんは悪いことなんてなんにもしてないよ』
『私が悪いの。それだけ』
Aの方の事情は知りっこないけれど、たぶん、あれは触れてはいけない領域の問題だろう。
俺にとっての、ま〜くんや兄者との関係のように、ひとには各々に不用意に他人が触れてはならない領域がある。
それがAにとっては、俺を避ける理由らしい。
『私を信じちゃ駄目だよ、凛月くん』
『じゃなきゃ、頭から食べられちゃうかもしれないよ』
『だから、私を疑ったままでいてね』
あの言葉が、俺のあまりにできすぎた幻聴なのかはわからない。
そして、それが幻聴でなかったとして。俺は何と返すべきなのだろう。
自分の中を隅々まで探しても、今はまだ、答えは見つからない。
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凪湖(プロフ) - まりぽん。さん» はじめまして！コメントありがとうございます。お褒めの言葉とても嬉しいです。忘れた頃に覗きに来てくださるともしかしたら更新してるかもしれません！すみません…………！がんばります！ (2022年1月29日 23時) (
レス) id: 601054dbfe (このIDを非表示/違反報告)
まりぽん。(プロフ) - はじめまして。この作品で初めてケーキバースというのを知りました！話の構成や表現の仕方も素晴らしくてすごく面白いです！最近は更新なされていないみたいですが、一ファンとして応援しています！更新待っています！ (2021年9月5日 12時) (レス) id: 830f87a26c (このIDを非表示/違反報告)
凪湖(プロフ) - 蒸田。（むしだ）さん» はじめまして！コメントありがとうございます〜！伏線の貼り方等嬉しいお言葉本当に嬉しいです。伏線はかなり迷いながら張っているのでそう言って頂けて心底安心しました。私生活優先のため不定期の更新になりますがお付き合い頂ければ幸いです……！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ed70c08211 (このIDを非表示/違反報告)
蒸田。（むしだ）(プロフ) - はじめまして。カニバリズムやケーキバースというものを初めて知ったので、詳しく調べたうえで改めて一気読みさせて頂きました！！すっごく面白いです…！！私自身も陳腐な小説を書いているのですが、作者様の伏線の張り方に感動しました…。これからも頑張って下さい！ (2020年5月24日 8時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
凪湖(プロフ) - 初めまして。コメントありがとうございます。ケーキバースを気に入って頂けて嬉しいですo(^o^)o綺麗とのお言葉もありがとうございます。とても励みになります！レイ様も体調の方ご自愛くださいませ。 (2020年4月20日 15時) (レス) id: ed70c08211 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：凪湖 | 作成日時：2020年4月19日 2時
