この涙を知らない。 (ページ7)

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０７少しだけ特別。ページ7

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「頼むから、分かって」

「･･･。」

「妬いてくれんのは嬉しいけど、
桐乃に関しては仕方ないことだから」

「･･･宏光は私の事何も分かってないんだね」

「は？」

「これが、ただのヤキモチだと思うの？」

「じゃあなに？」

「宏光は最近、私の話も聞いてくれないよね。
なのに･･･あの子の話は二人きりになってまで
聞いてあげるんだね」

「だから言ってるだろ？
Aの話とアイツの話はまた別だって」

「それって私の話はどうでもいいってこと？」

「そうじゃない」

はあ、っと呆れながら深くため息をつく宏光
私だってこんな喧嘩腰に言うつもり無かったんだよ

だけど私が思う以上に、
宏光は私に興味がなくなってきてるんだよね？

だからもうこんな言い合いも面倒になって
早く終わらせてしまいたいんでしょ？

「･･･もういいよ。
そんなにあの子が心配ならあの子の傍に居てあげれば？」

こんなセリフ、言うつもり無かった
絶対口にしちゃいけない言葉だった

なのに私は･･･弱いから
いつか宏光の口から言われちゃうより

自分から言ってしまう方が
まだ傷つかなくて済むって思ったんだ

「それ、本気で言ってる？」

私を試すような目で見る宏光の視線からは、

戸惑いさえ感じなくて

まるで、そう言うなら本当にそうするよ？って

今私がここで頷けば
本当に宏光はあの子の所へ行っちゃうんだなと思った。

「思ってもないこと言うなよ」

「･･･ごめ、なさい」

「ほら、こっち来いよ。」

また泣き出す私に宏光は呆れた顔をしながらも、
私の体を引き寄せて
布団の中でギュッとキツいくらいに抱きしめてくれた。

その腕の中に居れることが、やっぱりすごく幸せで。

だけど今、宏光がどんな表情をしているのか
どんなことを考えているのか
宏光の本心がだんだん分からなくなってきて苦しい

この力強い腕を信じていいの？

宏光の愛を受け止められるのは私だけって
そう思い込んでもいいの？

宏光の腕の中に居ても
私の不安な心は消えはしない。

どう考えたってあの子は宏光にとって

少しだけ特別な存在であるのは変わりないから。