この涙を知らない。 (ページ12)

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１２眼差し。ページ12

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感情がぐっちゃぐちゃになっている中、

何とか必死に業務を終わらせて
真っ直ぐに宏光と住む部屋へと帰った。

そしてその数十分後には
ネクタイを緩めながら「ただいま」と小さな声で呟きながらソファに座る宏光が帰ってきた。

「･･･おかえり、」

「ん、あのさ･･･A、」

「なに？」

「･･･こっち、座ってもらっていい？」

自分が座っている隣をぽんぽんとする仕草を見て
今からするのは真面目な話なんだろうと察した

そしてその話は、

私にとっていい話では無いんだろうと
宏光の雰囲気から分かった。

「･･･桐乃の話なんだけどさ、」

「うん」

「･･･あいつと、なんかあった？」

「え？」

「今日、2人で昼飯食ったんだろ？」

「うん、」

「なのにバラバラで帰ってきたしさ、
それに･･･桐乃の目が赤かったからさ」

「･･･。」

私の反応を伺うように、
宏光は私の目を真っ直ぐ見て逸らさない。

その目は、完全に私のことを
責めているように見えて

“ お前が泣かしたんだろ”

まるでそう言われてるみたいだった。

「私が、泣かしたんじゃないかって
そう思ってるの？」

「･･･どんな話したのかは知んないけどさ、
この前俺に桐乃と一緒にいて欲しくないって
言ってただろ？それもあったし」

「･･･だからって、私が桐乃さんに意地悪言うと思うの？宏光から見て私は･･･そんな女なの？」

「･･･。」

ねえ、どうしてすぐ否定しないの･･･？

どうして今にも泣いてしまいそうな私を
抱きしめてくれないの？

あの子の事は、簡単に抱きしめてしまうくせに

私の存在なんて無視で
あの子にはとびきり優しいくせに

私に向けなくなった優しい眼差しも
あの子には簡単に向けてしまうくせに。