この涙を知らない。 (ページ11)

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１１戻れない。ページ11

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「Aさんは私に優しいフリしてただけじゃないですか」

「･･･え？｣

「私が一人でいる時だけ優しくして
私が周りにやな事されてる時は見て見ぬふりだったじゃないですか」

「･･･。」

「なのに今更、頼って欲しかったなんて言うんですか？」

「･･･。」

「少しでも、私のこと庇おうとしてくれたことなんてありましたか？」

「･･･。」

彼女の濡れた瞳は、
どんどん憎しみを含んで赤くなっていく

「･･･Aさんみたいな人が
北山さんに愛されてるなんて、私は信じられません」

捨て台詞のように、

彼女はその言葉で私の心を修復不能なまでに深く抉って先に店から出ていった。

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暫く、私はその場から動けずにいた。

もうすぐ休憩時間が終わるというのに、
彼女の言葉は予想以上に私の心にダメージを与えて

なんだかもう、このまま･･･

会社にも、家にも戻りたくなくなったんだ。

“ 優しいフリ ” か、
確かにそうだったのかもしれない

感情的に否定しそうになったけど、

それもできなかった

否定できる根拠が私には何も無かった
彼女が言っていることは正しい

いつだって私は、

優しく振舞っているようで、
肝心な時には見て見ぬふりで

自分が損しないように、
周りの反感を買ってしまわないように

助けを求めている彼女から
目を逸らしてきていたんだ。

ダメだな、私･･･

最低だ、

こんな時でも、まだ
彼女のことが許せないんだから

こんな時でも、宏光の事が
愛おしくて仕方ないんだから

だけど、もうきっと

宏光の好きな私になんて戻れないんだろうな