この涙を知らない。 (ページ2)

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０２恐怖心。ページ2

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「なんか今日すげー疲れたわ」

お風呂から上がって濡れた髪のまま
ソファに座ってる私の肩に頭を乗せてくる

「髪乾かさないと風邪ひくよ？」

「乾かして？」

「･･･仕方ないな」

宏光がそうやって上目遣いで甘えるのは、
私だけであって欲しい。

宏光の傷んだ髪に触れられるのも私だけがいい

独占欲が強まるほどに
また私はあの子に対して恐怖心を抱いてしまう

いつか、あの子の前でもこんな風に甘える日がくるんじゃないかって。

宏光が簡単に心変わりするような人じゃないっていうのは分かってる

だからこそ、

あの子への本当の気持ちに気付いた後が怖いんだ

きっと、気づいてしまえば
私は簡単に振られてしまうと思うから。

「はい、終わったよ。」

「ありがと、もう寝る？」

髪を乾かし終えたら、もう宏光の目はトロンとしてて
今にも眠ってしまいそう

私はそんな宏光のトロンとした目が特に好き。

なんてったって可愛いし
この時の宏光がいちばん無防備な気がするから。

上司の頼れる北山さん。じゃなくて、

私の彼氏の宏光って感じがして
今もずっと胸のトキメキがとまらないんだ。

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翌日、会社のお手洗いで目を真っ赤にしている彼女に居合わせた。

きっと宏光はこの涙目に弱いんだろうな。
なんて彼女と目が合って最初にそんなことを思った。

涙を貯めている彼女を見て
可哀想と思うよりも先に憎いという感情が溢れる。

そんな自分が嫌だけど、
こんな自分にさせたのは紛れもなく目の前にいる彼女だ。

「･･･桐乃さん、大丈夫？」

「すみません、大丈夫です。」

か細い声で大丈夫と答えるけど、
貯めてた涙が一気に流れ落ちる。

彼女は、若くて可愛いっていうだけで
一部の上司にパワハラを受けている。

最初は私もそんな彼女のことを可哀想だと思ったし
守ってあげたいとも思った。

仕事は真面目にしてくれてるし、
上司の私情で振り回されたり理不尽だったから

だけどそんな彼女が1番に頼りにしたのは
教育担当の私じゃなくてあまり接点のなかった宏光だった。