17:トイプードル ページ17
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松川さんにアドバイスを貰ったあの日から
“きっかけ”を意識するようになった私。
待っているだけじゃダメな気がして
今までとは違う自分を見せることが出来たら
少しは意識してくれるのかな?って
髪を巻いて、いい匂いのするヘアスプレーをかけて
出社すれば
「なんか今日トイプードルみたいで可愛い」
「ト、トイプードルですか?」
くりんくりんに巻きすぎちゃった私の髪を見た北山さんは
トイプードルを連想しちゃったらしい
きっと、今の可愛い発言は
女としてじゃなくて動物としての可愛いだと思う・・・。
「なんかいつもと違う匂いすんね」
北山さんにバレないように下向いて口を尖らせていたら
クンクンって今度は北山さんが犬みたいだよ
「あ、ヘアスプレーかけてて」
「へぇ。いい匂いじゃん。
今日どうしたの?デートの予定でもあんの?笑」
からかうように北山さんが笑う。
その笑顔を見て少しズキンと痛む胸。
私にデートの予定があったとしても
北山さんは笑顔で送り出してきそうだな。
楽しんでこい!って背中押してきそう。
やだな、北山さんにそういう事されたら。
「デートの予定なんてないです!!」
「あ、そう?」
思わず大きくなってしまった声に
少し戸惑った様子の北山さん
北山さんは何も悪くないのに
いつまで経っても一方通行なこの想いに
だんだん腹が立ってきて、とうとういじけちゃった。
キョトン顔の北山さんを置いて
自分のデスクに戻れば 今までにないくらい
猛スピード&鬼の集中力で仕事に取り掛かり
先週から溜まってた仕事を定時までに全て終わらせた。
そんな私の様子を気にして見ていてくれたのか
帰る準備をしている私の元へ
北山さんが声をかけに来た。
「今日、寿司いく?」
「・・・え?」
「デートの予定ないんだったら空いてるでしょ。
俺もすぐ行くから先降りてて」
周りには聞こえないくらいの声のトーンで
北山さんは私にそう告げたあと、
くるっと体の向きを変えて自分のデスクへと戻っていった。
私の返事も聞かずに行っちゃうなんて
北山さんは少し強引だけど
そういうところも、結構好きだったりする。
今日は帰ってヤケ酒コースかと思ったけど
トイプードルになるのも思ってたより悪くない・・・!?
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作者名:ぴの。 | 作成日時:2021年10月3日 15時