１２：可愛い。 ページ12
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北山さんが選ぶお店は、大抵どんな客層の方にも
愛されるような人当たりのいいスタッフさんが働いてるところが多い。
味も、もちろん美味しいけれど何より店の雰囲気がいいから
食べながら話す時間がより一層楽しく思えるんだ。
大学の時の飲み会でも大体北山さんが幹事をしてくれてた気がする。あの頃から、雰囲気のいいお店を選んでくれていた北山さんは、今も変わらずセンスがあって尊敬する。
｢筍の天ぷらってほんと美味しいですよね｣
｢塩で食べんのいいよね〜｣
サクサクの天ぷらを頬張っていたら
何やら急にツボに入った様子の北山さん。
顔をクシャクシャにして笑い出すから気になって
｢なんか顔についてますか？｣ と聞けば
｢いや、すげー口周りテカってんのよ｣
と、天ぷらの油でテカってるらしい私の口元を見て
ゲラゲラと笑い続けてる。
その反応に恥ずかしくなって
慌てておしぼりで拭いたけど。
｢そんなに面白かったですか？｣
歯に海苔がついてるとかならまだしも。
口周りがテカってる程度で笑いすぎなんじゃ、、、、
｢いや、面白いっていうか可愛いなって思ってさ。
飲みっぷりも食べっぷりも最高だと思うよ。｣
面白いというより、可愛い･････････！？
一瞬、頭の中が真っ白になりかけたけど
何とか平然を装って
｢からかわないでくださいよ〜｣
軽く流す方向で頑張ってみた。
だけど、本当は可愛いって一言で心臓はバクバクしだしたし
急に北山さんの目が見れなくなって目が泳ぎ出す。
これ以上、北山さんを意識して空回りするのは避けたいのに。
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｢食った食った〜｣
｢北山さんも中々の食べっぷりでしたね｣
お腹いっぱい食べたあと、
大きくなったお腹を擦りながら北山さんと外に出る。
｢ご馳走様でした。｣
｢どういたしまして。
今度はお寿司だな〜｣
もうすぐ梅雨入りの時期だけど。
夜は少し肌寒くて。
仕事終わりの賑わっていた時間帯も過ぎ、
北山さんの鼻にかかった声が街路にやんわりと響く。
｢この辺のお店何も分からないので
色々連れて行ってもらえるのが嬉しいです。｣
｢俺もね、嬉しいのよ。
佐藤が美味しそうな顔して一緒にご飯食べてくれるのがさ。｣
なんて言われるから、軽率に好きって言ってしまいそう。
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作者名：ぴの。
| 作成日時：2021年10月3日 15時
