０２ 嫌いな人。 ページ2
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｢先輩のこと嫌いな人なんてきっといませんよ｣
｢ほんとにそう思う？｣
｢思います。｣
｢藤ヶ谷にも嫌われてないと思う？｣
｢･･･。｣
まさか、その名前が出るなんて思ってなかったから
思わず動揺しちゃって言葉が出なかった。
｢ごめんごめん、困らせちゃったな〜｣
ここ、給湯室だから と何事も無かったように
案内を続けてくれるけど
正直、今の私の脳内は大学時代に起こった
“ あの事件 ” に関することでいっぱいだ。
｢あの、｣
｢ん？｣
｢藤ヶ谷先輩とは、あれから一切連絡とってないんですか？｣
｢それがさ、向かいにある会社で働いてんだよね｣
｢え？誰がですか？｣
｢藤ヶ谷が。｣
｢･･･。｣
｢気まずそうな顔すんのやめない？｣
いや、だって･････････。
大学時代、絶対2人のことを一度は好きになるって
言われてたくらい人気者だった北山先輩と藤ヶ谷先輩が
ひとりの女の子をキッカケにとある事件を引き起こしたわけだけど
そんな2人が、今も近くにいるって
なんか、信じられない。
｢今でもあいつ、すっげーかっこいいよ。
まだ独身らしいし結構な確率で隣のカフェで
コーヒー飲んでるから声掛けてみたら？｣
独身。というワードにハッとなって
先輩の左指に反射的に落とした視線。
｢ちなみに俺も、独身だけどね｣
その視線に気づいた先輩が少し気まずそうに笑う。
｢いや、私･･･ちゃんと仕事しにきたので。｣
｢分かってるよ。(笑)｣
狙ってる感が出てたらやらしいな、と思って出た言葉は
社会人として当たり前のこと。
｢じゃ、一通り案内も終わったし
早速 仕事に取り掛かろうか｣
落ち着かないままの私の背中を
ポンッと押してくれる。
仕事モードに切り替わった先輩の横顔は
初めて見るかっこよさで新鮮だと思った。
そんな先輩と、同じオフィスで働くこれからを
私はどんな風に過ごしていけるんだろう。
上司として、ずっと憧れてた先輩として慕うことで
満たされるくらいなら
あの時見た光景を、秘密になんてしなかったのに。
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作者名：ぴの。
| 作成日時：2021年10月3日 15時
