０１ 呼び方。 ページ1
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｢････････････北山先輩？｣
｢懐かしいな、その呼び方(笑)｣
転職先で大学生の頃、憧れていた北山先輩に再会した時は
流石に運命だと思った。
まぁ、そう思ってしまったのは
久しぶりに見た北山先輩の姿が、私の憧れのままだったからかな。
｢私のこと、覚えてくれてたんですね｣
｢そりゃあ、まあ･･･ね？｣
含みのある笑い方。
まるで先輩のファンみたいに付きまとっていた過去が
今更恥ずかしくなる。
｢あの頃はすみません･･･。
私にとって先輩は推しみたいなもので。｣
｢そう言ってくれんのは嬉しいよ｣
変わらない、優しい笑顔。
話してるだけで包み込まれてるみたいな気分になるのは
どうしてかな。
相変わらず、先輩はクシャって笑う顔がキュートで
あの頃から約10年が経ったなんて、とても思えない。
｢流石にもう社会人なので
あの頃みたいに騒いだりしません。
しっかり仕事するのでご安心ください。｣
あの頃と同じだなんて、思われたくないから。
仕事モードに切り替えて指示を仰げば
何故か ｢んはは｣って楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
｢どうしましたか？｣
｢いや、なんか面白いなって｣
｢･･･！？｣
｢まあ、とりあえず案内するから着いてきて｣
ひと笑いの理由はさり気なく誤魔化されたけど
どうやら先輩が私の教育係っぽいから
ラッキーだなって、小さな疑問はすぐ捨てた。
｢ここでは、北山さんって呼んだ方がいいですよね？｣
｢そりゃそうよ｣
んははって、また笑われる
そんな先輩の横顔を無意識にジッと見つめてたら
｢すっげぇ視線感じるんだけど｣
｢あ、ごめんなさい｣
やりづらそうに眉を下げられるから
早速やらかしちゃったな･･･と、反省。
｢なんか、不思議で･･･
またこうして会うなんて。｣
｢それは俺も思うよ。
すっげー偶然じゃない？
もしかして、俺目当てで来た？(笑)｣
｢先輩がこの会社に在籍してることを知ってたら
もっと早くに転職してました｣
｢んはは、そんなに俺のこと好きなの？｣
冗談っぽく笑いながら
私の反応を伺ってる。
そんな先輩に素直な気持ちを伝えられていたら
私の恋愛観は、ここまで拗れていなかったかもしれないのに。
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作者名：ぴの。
| 作成日時：2021年10月3日 15時
