私があなたの彼女です [赤緑]

有給消化 ページ36

そっか、そういえば同じ授業…
お昼食べた後一緒にここまで来たっけ。

神ちゃんがゆっくり顔を上げ目が合うと
ようやく事の重大さに気づいた


慌てて紙をもぎ取り鞄に詰め込む



「ごめんねありがとう拾ってくれて」

「A」


「授業プリント取って来た？まだ？じゃあ私」

「A！」



立ち上がる私の肘元を掴む神ちゃん

気まずくて黙り込むと
神ちゃんは大きく息を吐いた



「よし。鞄持って」

「え？」


「出よ。教室」

「え、でも」



「プリント取ったしこれ出席取らん授業やろ。
今日は有給や、有給消化」


2人分の荷物を手際よく片付け
そのまま私の手首を掴んで教室の外へと引っ張られた





教室から少し離れると握る強さも歩く速度も緩め
ゆっくりと外の何処かへ連れて行かれる



ここ座ってて、と言われ目を上げると
目の前には大学キャンパス全体が広がっていた

さっきいた教室もそこに見える



「どっか行ったらあかんよ。返事は？」

「…はい」


うん、と頷いた神ちゃんはすぐ側の階段を降りて行った



少し坂と階段を上がった所にある
やや奥まった、人気がない木陰

こちらからは全てが見えるけど
下からはよほど顔を上げないと何も見えない



「お待たせ。あれ、座らんの？」

「ちょっと、景色見てて」


「見晴らしええよな。ここ、濱ちゃんが教えてくれてん」

「へぇ…いい所知ってるんだね」



な、と私の隣で一緒に少し景色を見てから
はい、と冷たいボトルを渡された

ラベルを見るとそれがジャスミン茶ということが分かって
神ちゃんを見るとニコッと笑われる


ベンチに座りながら私はペットボトルを
神ちゃんはジュースの缶を開けた



「合ってた？飲み物チョイス」

「うん。100点中120点」


やったぜ！とガッツポーズする神ちゃんに頬が緩む



小さな頃、缶の飲み物を開けようとして
盛大にこぼしたことがあるトラウマで

今でも何となく缶の飲み物を避けてしまう


プラス、プリンセス大好きだった私は
その頃どんなジュースよりジャスミン茶を飲みたがって

なかなか自販機やレストランで見かけないそれは
私の中ではご褒美ドリンク


今ならコンビニですぐ買えるんだろうけど
何となく、特別な日にしか飲まない物になっていた



一口飲むと渋みの少ない優しい味が広がり
爽やかな香りが鼻を通り抜ける



目の前に広がる青空と
優しく木を揺らすそよ風にぴったりで

久々にほっと一息つけた気がした


しばらく隣同士で座りながら
自分の飲み物を飲みそよ風に当たる



「…あのね」



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