私があなたの彼女です [赤緑]

偽の真実 ページ12

「まず、俺がしげに嘘ついたのを謝らなな？」




照史くんは、しげとツバキちゃんのご両親
どちらとも話し合って

ツバキちゃんのことは言わないでおこう、という結論に至った



『重岡くんに、これから一生
"ツバキのことを守れず自分は無事だった"という
罪悪感を背負わせることを

ツバキは望んでいないと思います』



ツバキちゃんのご両親はそう言ったらしい




1番肝心な所を偽の真実で伏せておけば
最低限の時が過ぎるまで思い出すのを遅らせてくれるだろう。

そう思い、そもそもしげは1人だったことにした




「でもしげの脳も頑張ったんやろな。
俺が思ったよりちゃんと事故のことを覚えとって

俺、医者のくせに焦ってもうて…情けないわ」





「…あの、照史。もしかして、なんやけど

しげにはこれからもずっと
昔のことは思い出させないつもりなん？」





神ちゃんの質問に、ゆっくりと息を吐いて
背もたれに身を預けながら腕を組む照史くん





「…親御さんらとも話して、
それが1番ええなってことになってん。

過去のこと思い出させて
結果事故のことを思い出させてもええことないな、って」



「そんな…！」





「そりゃあ神ちゃんは
思い出してほしいやろうよ、自分のこと。


でも、しげの気持ち考えてみ？

ここで思い出したら、しげは一生
紅ツバキちゃんのことを背負って生きて行くんやで？


それでも記憶が全部戻ってほしいと思う？」





「それは…」



唇を噛み締めて悔しそうに黙り込む神ちゃん





「じゃあ…私はこれから、
少なくともしげと自然に"別れる"まで

しげの彼女でいればいいんですね？」




「Aちゃんがあんなこと言うのは
想定外やったけど、案外悪くなかったのかもしれへん。


2人には辛いと思うけど、
なるべく昔を思い出させへんように

しげとは新しい関係を作ってもらわなあかんねん。出来そう？」





「…はい、頑張ります」


「ちょ、A！そない簡単に飲み込めるん？」




「だって他にないもん、みんなが幸せになれる方法。

私たちもしげと友達でいられなくなるんじゃなくて、
幼馴染でいられなくなるだけ。でしょ？」



「まぁ、そやけど…」





まだ悩んでいる様子の神ちゃんとは対照的に

私は自分でも驚くほど冷静だった






それより先に

これからはどのような関係性になって行くのか
すでにああでもない、こうでもないと考え始めていたし


何ならちょっと楽しみだったりした






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