【文スト】居酒屋からはじまる物語【中原中也】

其の拾壱は ページ14

休みの日に近くのデパートに買い物に来ていた


『食料品は買ったし、後は…あ、服とか見たいかも。』


服屋の中からふと、外を見ると中也さんがいるのが見えた

慌てて追いかけようとするがその足が

ピタリ、と止まる


『…お、女の人…？』


彼の隣には綺麗な女の人が。


『…そ、そりゃ中也さん美形だし、彼女の１人や２人いても問題ないよね…、うん。』


２人もいたら問題なのだが、そんなことを気にしている余裕などなかった

そのまま買い物を続ける気にもなれず、店を出る


外に出た瞬間

ポツリ、ポツリと降り出した雨


『…はぁ、最悪…。』


雨が降ってきたことが原因か、はたまた違うことでなのかどんどん落ち込んでくる

この雨からも気分からも逃れるために全力で走った


下を向いて走っていたせいか体に軽い衝撃

どうやら人にぶつかったみたいだ


『…すみません。』


顔を上げられず、うつむいたまま謝れば


「いえいえ、こちらこそ。お怪我は？…あれ、Aちゃん？」


聞き覚えのある声が。


『…え、太宰さん？』


驚いて顔を上げれば、急に焦ったような声


「Aちゃん、なんで泣いているの？」


思わず頬に触れると、水に混じって暖かいものが流れている


『あ、え？なんで…？』


困惑する私に傘を傾ける太宰さん


「…ここだと濡れてしまう。あそこのお店に入ろうか。」


『はいっ……！』


溢れ出てくる涙を何度も拭いながらカフェに入っていった

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