だるまさんは転ばない！

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取り繕う言葉すらも出てこなくて、情けなく口をぱくぱくとさせていると、Aが先に口を開いた。


｢ゼミの男って誰のこと？｣

｢…………え？｣


何を言っているんだ？ Aが話していた一緒にAPEXをしているという男じゃないか。俺のAに近付いた、その男じゃないか。

顔も名前も知らない相手にドンドン嫉妬心が膨らんでいく。


｢だるまくんにゼミの男の子の話なんてしたっけ？｣


Aは本当に分かっていないようだった。


｢いや……Aが言ってた、APEX教えてくれてるっていう……｣

｢ん？｣


Aはふむ、と少し考えて、からかうように笑った。


｢んふふ、だるまくん勘違いしてんで｣


俺は混乱で言葉を発せなかった。


｢APEX誘ってくれたのは女の子だよ｣

｢あ、え……おんなのこ……？｣

｢うんそう、ゼミで仲良くなった女の子｣


ふっ、と力が抜けた。溜まっていた嫉妬心が溶けていって、目から溢れそうになった。でも絶対にAには泣いているところなんて見せたくない。気合いでなんとか涙を抑え込む。



｢な、なんやぁ〜勝手に男やと思てたわ〜｣


絶対に誤魔化せていないが、今の俺にはこれが精一杯だった。

Aはそれ以上は何も言及せずにニコリと微笑んだ。


｢やっぱりだるまくんの方が上手だよ｣


やはり含みがあった。確信はないが、もしかしたら本当にAは“だるまいずごっど”を知っているのかもしれない。

別に隠しているわけではない。タイミングがなくて話さないでいるうちに、なんとなく話したくなくなったのだ。その理由は俺自身もよく分からない。ただ、俺はAに知られたくなかった。



｢もう一回やろうよ｣


そう言ってスマホを握り直すAはどこか嬉しそうだった。

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