佐久早くんって美味しそうだよね【古森元也】

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最終セットは、序盤からシーソーゲームだった。


とってはとられて、を繰り返す。
元也くんは相手のサーブ、スパイクをしっかり拾っているし、3本目を託された佐久早くんもしっかり決めている。


けれどそれは相手も同様。こちらが打ったボールが上げられ、そのままコートに叩きつけられる。



観客席はみな、手に汗を握りながら応援している。


25点を迎えても勝敗はつかない。


28-27、相手のマッチポイント。

ここは絶対に落とせないところ。



長いラリーが続く。拾って、打って、拾われて。見ている方がしんどいくらい。


不意に、均衡が崩れる。

佐久早くんのスパイクに乱された相手が、2段トスから苦し紛れに打ち返してきたボール。


運悪くこちらのブロッカーの手にあたり、コートの外に大きく弾かれる。



レシーバーが追いかけるも、数センチのところで届かなかった。


ボールが落ちる音。同時に審判の笛がなる。



29-27


セットカウント2-1、優勝候補筆頭とまで言われた井闥山学院高校は、準々決勝で姿を消すこととなった。
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試合後。移動する気にもならず、暫く観客席で他の試合をぼーっと眺めていた。

ポケットの中で、スマホがブブッと震える。


古森元也まだ会場いる?
古森元也ちょっと会える?

Aうん、大丈夫だよ

古森元也ありがと、ロビーで待ってて



正直、何と声を掛けていいものか分からない。

元也くんや佐久早くんにとっては最後の春高ではないけれど、先輩方と戦える試合はこれが最後だったはず。


部活にも入っていない私が言えることなんて、たかが知れている。



会ったら何を話そうか。少しの不安を覚えながら、ロビーへと向かう。



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