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に! ページ4

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振り返っていたのは想像よりもだいぶ小柄な、派手な髪色をした人。
………ちっちゃい。でもその姿はどこか既視感があった。

佐「あ、お前今失礼なこと考えたろ!」

ぷくぅっと頬を膨らませる。童顔だし可愛い。
なんか…わんちゃんみたいだなぁ。

佐「また絶対なんか失礼なこと考え得てる!
もー佐久間さん怒ったんだからな!
お前の夕飯半分涼太に分けてやる!!」

あ、自分じゃ食べないんだ…(笑)
少食なのかな。でも現役高校生の僕にそれは困る。
なので、とりあえず誠心誠意謝ってみることにした。

ラ「ご、ごめんなさい。悪気はなかったんですけど…」

ペコリ、と頭を下げれば目の前の男性の表情は
みるみる柔らかいものに変わっていく。
恐らく根本が優しい人なのだろう、寧ろ困ったような様子で
両手を顔の前でブンブン振っていた。

佐「あ、ううん。おれもからかいすぎちゃった、ごめんね。
おれ、佐久間大介。きみは?」

さくま、だいすけ。その名前を知っていた。既視感の正体を理解する。
幼い頃からダンスをやっている僕からしたらヒーローみたいな存在。

ラ「僕、は、ラウール、です。
あの、佐久間さんって、あのダンサーの…?」

瞬間、びくりと小さな肩が跳ねるのがはっきりと見えた。
佐久間さんの笑顔が、引き攣っている。

佐「あ、う、うん、そうだよ。もうやめちゃったんだけど。」

どうして?
それは聞けなかった。なんとなく知っていた。
ダンサーの彼が大好きだった僕は、体操選手としても応援していた。
彼が姿を消すきっかけとなったあの大会も
テレビ中継を見ていたんだ。

阿「佐久間ー?あの子は…
ってあー…うん、よしよし。」

さっきの、阿部ちゃんさん(仮)が顔を覗かせて少し驚いた顔をした後に
そっと佐久間くんを抱きしめる。

佐「あ、あべちゃ、おれ、ちが、ちがう、だいじょぶ、
らう、らうが、らうに、あ、あぁ、ごめ、ごめん、なさっ…」

肩を震わせて首を振って、違う、ごめん、って繰り返す佐久間さん。
恐怖に震えながら僕のことを気にする優しいひと。
あぁ、僕はなんて無神経なことを聞いたんだろう。

阿「よしよし、大丈夫、大丈夫だから。
もう頑張らなくていいんだよ。」

困ったように微笑みかける阿部ちゃんさんにも申し訳無さが募る。
だから、僕は僕のできることをやってみることにした。
何にもならないかも知れないけど、何もしないよりいいから。

ラ「佐久間さん。僕、貴方のダンスが大好きなんです。」

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作者名:yoa | 作成日時:2021年10月28日 19時

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