特別になりたい 【由唯 side】 ページ43
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刹那の母から貰ったメッセージに、添付されていた音声ファイル。
―――私は、由唯くんのことが大好きだから。
周囲の雑音の状況を考えれば、きっと誘拐された時の物だろう。
ご丁寧に刹那の言葉が切り取られていた為、一体どうなってこのセリフが出たのか…そもそもどういう状況下で録音されたのかは分からないが、これを聴いたのが一人の家の中で良かったと、心底思った。
当然、絶対消えない様に―――そして、どのデバイスでも引き出せるように、クラウド保存したけどね。
緊迫した状況下で、嘘を並べられるほど彼女は器用ではない。
だから、この“言葉”が 刹那の本心である事は事実だろう。
そして、刹那の母からこのタイミングで送られてきたという事は、結(弟)達に対する“好き”と同じだという事も、考え難い。
『………刹那が、俺を…………好き?』
君の、特別で いられる―――?
それなら、嬉しい―――凄く…嬉しい!
なのに―――
バイト中は尽く避けられ、セツに会いに来るときも直ぐに帰ってしまう―――
その真意を確かめようにも、彼女とゆっくり話をするタイミングが取れないでいた。
原因は―――なんだ?
明らかな挙動が見られたのは、あのメッセージを貰った後から……と、いうことは。
由唯は抱えこんでいた頭を挙げ、アシスタントAIでメッセージを作成する。
宛先は―――
『綿貫 綾子に、メッセージを作成―――Text……』
“俺にあのメッセージを送った事、せっちゃんに言いました?”
遅れて返って来た、悪びれもない“YES”のメッセージに、由唯は苦笑いを浮かべた。
―――ははっ。やっぱり ……
ここで焦っても、いい結果は得られない。
それに、待たされるのも 焦らされるのも―――嫌いじゃない。 刹那になら…
だから、夏季休暇明け始業式の日に 彼女の家(孤児院)で待ち伏せた。
―――せっちゃんの準備が出来るまで、待ってるから。
君の心が、俺に向き合ってくれるまで
気持ちの整理ができるまで―――
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時