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『……せっちゃんも、無理しなくていいよ？』
俯く刹那の顔を覗き込むように腰をかがめる。
『お姉さん達と仲良くなっていたし―――彼女達と相部屋に……』
刹那の頭をポンポンと撫でる由唯に、刹那は「違う―――」と言葉を割った。
「由唯くんと――― 一緒……が、い」
『えっ―――』
そう言って顔を上げる刹那は、顔を真っ赤にして視線を逸らせる。
口ごもる彼女の声は、ロビーに流れるクラッシック音楽にかき消される程小さかったが、由唯の耳にははっきりと届いている。
『あ―――うん、解った』
片手で頭を抱える由唯は、自分と刹那の荷物を肩に担ぐ。
治まらない動悸を隠して平然を装いながら、ルームカードに表示された部屋へと向かった。
(その顔は、ズルい。―――俺が、ヤバいです…刹那さん)
「由唯くん、由唯くん！」
ロビーでホテルの館内図を確認していると、同じく部屋へと向かう途中のお姉さん達が、由唯を手招きする。
『―――？』
「女の子は、男の子からの積極的なアプローチを待ってるものなんだから♪」
「頑張ってね？」
『―――ホント？』
ぽんぽんと肩を叩かれていると、今度は部下と酒を買いに出ようとしていた叔父が、ニマニマと笑いながら呼び止める。
「“自律”とは、如何なる時でも自らを見失わない事―――頑張れよ？少年」
ははっ。
(―――その、自律を乱すアクシデントを起こしておいて、アンタが言うかよ…)
乾いた笑いを浮かべながら、エレベーターホールで待つ刹那の元に戻った。
エレベーターに乗る。
二人きりの無言の時間が、どことなく気まずい。
―――こんな調子で、朝まで大丈夫なのだろうか……
“夕飯は20時。朝食は6時半からのビッフェを各々取り、9時に荷物をまとめてロビー集合”
圭吾からの一斉メールを受け取った由唯は、窓際に置かれた小さなソファーに腰掛けてため息を落とす。
メールには、食事会場の階とレストラン名が記されていた。
左手首の時計に視線を移すと、まだ空も明るい18時過ぎ。
刹那は寝るのが早かったな……夕飯が20時なら、先に風呂に入っておくか―――
確かこのホテル、大浴場があったはず…
由唯はロビーで確認した館内図を脳裏に浮かべた。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月9日 9時
