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周囲のスタッフから事情を聴いた叔父・圭吾が、蹲る由唯達の元へと駆け付けた。
「また来るかもしれないな―――今日はもうブースに立たない方が良い。帰ろう、家まで送る」
『―――はい』
圭吾は、刹那に対しても由唯に付き添うように伝え、車で家まで送ると申し出る。
圭吾が運転する車の後部座席で、由唯は先日の見合いの事を刹那に告げた。
繋いだ刹那の右手から伝わる温もりと、先程の刹那の言葉が、由唯の不安を払拭してくれる。
「高校生でお見合いとか…なんか、凄いね―――」
戸惑う刹那の反応は、当然だろう。だが、これがアイツ等のやり方…他の選択肢を奪って、思う方向へ誘導していく。気づけば両親の敷いたレールしか残されていない様に。
運転をしながら聞いていた圭吾は、小さなため息を落とす。「奴等なら、やりかねない・・・・・・」と。
見合い相手というあの女も、恐らく父や母の息がかかっている。
じゃなきゃ一度断った男の元に、あれほど図々しく来れるものか。
「着いたよ―――」
刹那の住む孤児院の前に車を停める。
由唯は、「有難うございます」と小さく頭を下げ、車を降りようとする刹那の手を引き留めた。
『せっちゃん―――もし…もし、何かあったら、直ぐに俺に連絡して？』
「―――何か…って？」
(あいつ等なら、やりかねない…俺に刹那を諦めさせるために、刹那に手を出すことも―――)
引き留めた手を、ぐっと握る由唯。
もっと…傍に居られたら―――近くにいられたら
俺に力があったら、君を守れるのに
「―――……刹那さんは、ここ(孤児院)にお母さんと住んでいるのかい？」
孤児院の建物を見上げながら、運転席から圭吾が声を掛けた。
「あ、はい―――母と、せんせいと…妹弟達と―――」
「―――……ふぅん。じゃ、安心だね」
納得したように頷く圭吾に、由唯は怪訝な視線を送る。
(―――まさか、この期に及んで刹那に手を出そうって言うんじゃないだろうな……)
そんな由唯の視線を背に浴びながら、苦笑いを浮かべる圭吾。
「いや。“あの人”がいるなら ここは世界で一番安全な場所だろうよ」
『はぁ？』
眉を顰める由唯に、圭吾はそれ以上を語らず――メモ紙に何かを記して刹那に渡した。
「由唯が繋がらなかったら―――オレに連絡してくれてもいい」
『はぁ？！どさくさに紛れて何渡してんだよ！』
わぷっ！
文句を並べる由唯の顔を掌で制し、圭吾は強引に連絡先を書いた紙を、刹那に渡した。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月9日 9時
