検索窓
今日:4 hit、昨日:37 hit、合計:1,835 hit

ページ20

暫く雑談を交わした後、千世は女中たちと共に奥の間に消える。
次々と運ばれてくる料理に、前の席では母達が嬉しそうに声を上げた。

「どれも美味しそう―――本当に、お料理がお上手なのね、千世さん」
「須藤の名に恥じぬよう、きちんと躾けてありますので、きっと由唯さんのお役に立てますわ」

どこぞの三つ星レストランを彷彿とさせる料理が、食卓を彩る。説明される料理名は、どれも横文字で聞き慣れない物ばかりだ。

だが、全ての料理が運ばれても、千世が一向に戻ってこない。
「どうしたのかしら―――」「誰か千世を呼びに……」
洋間に、騒めきが広がる―――


タイミングよく振るえる左手首に、由唯は下を向いたまま口を綻ばせた。

「―――お待たせして、申し訳ございません……」

丁度その時、女中に連れられた千世が客間に戻るが、その顔色は青ざめている。


(―――なんだ。思ったより早かったじゃないか……おかげで料理に手を付けずに済んだ)


右手を机下に忍ばせて、届いたメッセージを確認する。

“第三者の介入で、双方のメリットとなる取引を崩せた。今の須藤家に、七瀬のメリットはない。姫さんの安全も確保”

(―――やはり、刹那に手を出していたか)
確認したメッセージに、由唯は奥歯を噛み締めた。


由唯は左隣の席に座る千世に、にんまりと顔をほころばせて尋ねた。

『大丈夫ですか?千世さん。顔色が優れないようですが―――』
「―――……問題ございませんわ。ご心配をおかけして……」

その声は、明らかに震えており、前に座る母達も、千世のその様子に、心配そうに声をかける。

『もしかして、保護していた黒猫が 逃げ出してしまいましたか?』

由唯の言葉に、千世は目を見開き振り向いた。
「―――どうして……」

彼女の慌てようを見れば、叔父に依頼していた“根回し”が功を奏したというのは、本当だろう。
結託のメリットのない須藤家を、あの男が贔屓にするはずがない。早々に斬り捨てるに決まっている―――

そうなれば、この縁談も終わりだな……。


“―――仕事が早くて助かる”

由唯は顔を正面に向けたまま、机の下で返信メッセージを打ち込むと、即座に、メッセージが帰って来る。

“オレが―――じゃなくて、綿貫先輩が。な”

(―――綿貫…先輩?)


どういう事だ?

├→←好きな物 【由唯 side】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 7.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:恋叶学園 , 派生作品 , 合作
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月9日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。