キミの傍に【刹那side】 ページ11
＊
縛られた部分が痛い。
けどそれ以上に、彼の笑顔が悲痛に歪む方が───もっと痛い。
『確かにウチと由唯くんとでは生まれも育ちの良さも違うよ。
でも、だから出逢えた──』
同じ年に彼が七瀬家に生まれ、この町に住み、バイクを好きになり、恋叶学園に入学してくれた。
『1つでも欠けてたら“今の由唯くん”にはなりえなかったと思う』
価値観が違うから惹かれたのは所詮きっかけにすぎない。
でも、好きになったのは
『彼の心からの笑顔を見たから』
脳裏を駆け巡る数々の由唯くんとの思い出。
それら全てがウチに勇気をくれる。
『彼と話したい。彼を支えたい。彼を助けたい。彼の傍にいたい。
彼には──笑っていてほしい。
ウチは、由唯くんのことが大好きだから』
──せっちゃん、俺は────
あれが、違う意味だとしても
『ウチは、由唯くんの言葉を信じてる』
なのに
貴女はどうしてそんなに無理矢理なの？
どうしてそんなに──焦っているの？
“「ｯ？！」”
画面越しの彼女の表情が、初めて歪んだ。
『貴女はとても綺麗な人。こんな強行手段を使わずとも由唯くんと仲良くなれるはず“「黙って下さいます？！」”……！』
荒々しい、されどまだ己を律しようとする声が彼女から発せられた。
“「愚民が、ペラペラと好き勝手に何様のつもり？！
挙句の果てに私が、焦っている、と？冗談はよして下さい！
私はいつでも完璧です！焦る必要など微塵もありません！」”
言葉とは裏腹に、彼女の声に余裕はない。
“「私はｯ須藤家として『でも、貴女は千世さんだ』……ｯ？！」”
唇を噛み締める彼女たちは酷く何かを我慢しているように見えるのは私の勘違いじゃない。
きっと、彼女も犠牲者なんだ。
彼女の号令で動き出した周りの人達は各々に武器を構えている。
それをどこか俯瞰的に見つめるウチは変なのかな。
「────はーい。そこまで」
ﾋﾞﾘﾘｨ！！！
「ぐあぁっ！」
苦しそうな悲鳴とともに男性達がその場に倒れ込む。
当然、彼女の映る携帯も重力に従い床に落ちた。
「いやはや、恋する女の子の戦いはいつ見ても白熱としていますね」
思わず魅入っちゃいました。
戸惑う千世さんの声の向こうで、1人だけ立っている者がいた。
その人は目深に被った帽子の唾を掴みながらこちらに歩みよってくる。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月9日 9時
