ゆいのゆめ 3/3 【由唯side】 ページ7
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「何を―――しているの?」
インターネットのゲーム動画を見ながらヴァイオリンの弓を振り回していると、同じ学園に通う一つ年上の姉が目を見開いて不思議そうに顔を傾けた。
『―――……初夏には関係ない』
「―――ごめん、なさい―――。母様からまた、果物が届いたから……」
飴色の瞳を寂しそうに俯かせ、両手で段ボール箱を抱えた姉が、キッチンにそれをどさりと置く。
荷物を持ってくるならあらかじめ連絡しろと言っておいたはずなのに……
不機嫌に顔をゆがめ、携帯電話を覗くと、メッセージが送られてきていた。
(あ―――来てたのか)
家族からのメッセージは、音が鳴らない設定にしてあることが裏目に出た。
『―――……あのさ、俺がこの前の果物を受け取った事、母さんに言ってないよな?』
「え―――っと、桃とスイカとメロンは由唯が食べてくれたって…伝えたけれど―――」
ダメだった?母様、喜んでいたわよ。
きょとんと首を傾げる姉に、頭を抱える。
(ダメに決まっているだろ―――。俺が受け取ったなんて聴いたら、当分あの人、桃ばかり送り付けて来るぞ)
嫌な予感がして姉が持ってきた箱を開けると、案の定中には桃とスイカとメロンがぎっしりと詰められていた。
(やっぱり―――明日刹那に何とかしてもらお…)
短い溜息を吐く由唯に、初夏は「ヴァイオリンの弓は、乱暴に扱っちゃダメよ」と告げて部屋を出て行った。
乱暴に―――扱うつもりはないのだけど。
ただ最近…おかしな夢をよく見るから―――。
弓を握る自らの手に、視線を落とした。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時