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セツの指差す方向を見上げると、そこには白いドレスに身を包み、鎖に四肢の自由を奪われる刹那の姿。
『―――せっちゃん……?』
夢だよな―――これ。
心臓が、激しく鼓動を打つ。
こんな悪趣味な夢……いくら自分の思考でも、あり得ない。
『せっちゃん―――せっちゃん!!』
叫んだこの声は、刹那に届かない距離ではない。
だが、どんなに叫んでも、鎖に縛られた刹那は瞳を閉ざしたまま。
『―――ッ刹那ぁぁぁ!!!』
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はっと目を開ければ見慣れた天井がそこにあり、荒れた呼吸と汗ばんだシャツがでうなされていた事を知る。仔猫のセツが「みゃぁ―――」と心配そうに声を上げて覗き込んでいた。
『―――夢だって、悪趣味過ぎるだろ……』
セツを抱き上げて胸の上に置き、その茶色い頭を指で撫でる由唯。
夢から醒めたというのに、どくどくと、動悸が激しく音を立てている。
閉じられたカーテンの隙間から、青い朝の光が射しこんでいる―――
何なんだよ―――この夢。
由唯はおもむろに携帯電話を取り出し、メッセージを打ち込んだ。
“おはよう―――せっちゃん”
(何やってんだろ…俺。たかが夢に―――怯えて。カッコ悪い)
大きなため息で呼吸を整えていると、携帯ディスプレイが青白く光る。ピロンと軽快な電子音が
メッセージの着信を告げた。
“おはよう、七瀬くん”
刹那からの返信だ。この時間に、起きていたのか―――
『―――ジョギングでも、行ってこよ』
洗面を済ませると、由唯は薄青くなり始めた外に飛び出した。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時