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『七瀬くん、飲み物のおかわりいる？』
「…………いる」
『はいはい』
名前呼びの作戦も、友人の前では控えてくれているみたい。
なんだかんだで優しい由唯くんがウチは好きだ。
みんなにも飲み物のおかわりを聞きつつ、空いたお菓子の袋や皿をキッチンに提げていく。
この手馴れた感に友人から「出た、刹那オカン」と小さく揶揄ってくるから。
軽く小突いて黙らせた。
自然と収まる彼の隣に、内心嬉しい気持ちが溢れたけど必死に堪えたウチを褒めてほしい。
『もう、ウチはみんなのお母さんじゃないですよー、ね？セツ』
御手洗の際に立ち寄った寝室で、セツにひとときの癒しを貰う。ありがとね。チュールあげる。
嬉しそうに舐めるセツにまた癒しを貰った。
いい頃合いに、夏季課題に取り掛かるよう促した。
「え〜」とぐずる声も聞こえるけど聞き入れません。
元々はこれが目的なんですからね。
ウチはノルマ分の課題は終わっているから友人の監視＆指導係。
由唯くんも終わっているから主に理数学の解き方を友達に教えていた。
最初はみんな集中してたんだよ？
でも、それも長く続かず
「でも、意外〜！男の子の一人暮らしの家って、もっと散らかってると思ってた」
の言葉をきっかけに、みんなの集中が途切れてしまった。
「そうそう！七瀬の家、片付いているよね―――」
「そりゃ、女子も来るって言ってたから、いかがわしいモノは外に出してないだろ〜」
「いーや。オレはこのバイクバカにそんな甲斐性はないと見る。どうせその辺のリビングボードの中に入ってるのはバイク雑誌ばかりだ」
「オマエ等、好き勝手言うなら帰れよ」
場所提供してくれた由唯くんが言ってくれてるのに、みんな各々に興味のある方向へ足を向けたり視線を飛ばしたりしている。
「ちぇ。やっぱりバイク雑誌ばかりじゃん」
リビングボードの戸棚を物色中の男子が不服そうに雑誌を捲っている。
あ、あれって由唯くんが載ってた雑誌だよね？
由唯くんの活躍を知りたい訳じゃないのかな？
「悪いが。ご期待に沿えるものは この家に無い。いい加減勉強しろ！」
由唯くんは苛立ちを滲ませながら立ち読みする友人の首根っこを掴む。
くすくす、と友人から聞こえ見てみると友人達もみんな分かっているかのように笑っていた。
『え、どういう事？』と友人に問いかけても「アンタは知らなくていいわよ」と頭を撫でられ教えてもらえない。
ウチの頭にはしばらく疑問詞が飛び交っていた。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月3日 23時
