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知って欲しいのは過去じゃない【? side】 ページ41



『──Wow…ここがサーキット、ですか?』
「………うん」
今日は無理を言って娘のバイト先に同行したわけだが、……ふむ。
見渡す限りの人の多さ。
夏だというのに厚めのジャケットを羽織り、長いズボンは膝部分にプロテクトを着けている人もいるね。
何とも活気に溢れた賑やかな場所だ。
──────酷く、嫌気がさす。

全て 笑顔の裏に隠して前を歩く娘の後を追う。
その先で待つ2人を見つけ、私は笑みを深めた。

『やぁ、遊びに来ましたよ』
片手を上げて挨拶をすると娘と同い年の男の子は小さく会釈をし、1人は

「──げっ?!」
激しく表情を歪めた。






「叔父様の言うことを聞いて大人しくしててね」
『はい♪』
心配げに何度も振り返る娘に、私は いってらっしゃい。と手を振り見送った。

「……」
『なーに?そんなに見つめられたら照れますねぇ』
「おい」
『あははっ』
振り返ると、口元が引くついている男がいた。
良いね、その表情。

「……“綿貫(わたぬき)”という名を聞いた時、まさかとは思ったが……」
やはり貴女だったか。

私は後ろで手を組み舐めるように下から覗き込んだ。

『久しぶりだね、七瀬くん』
「……お久しぶりです、綿貫“先輩”」
疑うような目に、私はより一層笑みを深めた。

『“先輩”なんて硬っ苦しい言い方はないなぁ。──圭吾?』
私達の仲でしょ?
「──ッもう、過去の話です」
顔ごと逸らされ舌打ちをされる。
ちょっと彼で遊びすぎたかな?

姿勢を正し、娘達が消えていった方へ視線をズラす。

『高校の話を語り合いたいところだが、ここは職場で今は君が上司(先輩)だ』
野暮なことをして嫌われたくないから もう黙ることにするよ。
肩を竦めて引き下がる私に、圭吾は小さく安堵の息をはいた。
そんなに嫌?
私は楽しかったけどなぁ………あの時も。




「───では、こちらで大人しくしていて下さい」
『はーい』
通されたのは医務室。
ライダーがレース中で怪我をした時に診る場であり、救急車が来るまでの命綱の役割も果たしているのだろう。
室内をぐるりと観察してみる。
設備は学校の保健室のようなものが配置されており、簡単なものなら大体揃っているようだ。


開け放たれた窓の隙間から、娘のよく通る声が微かに聞こえる。
頑張っているようだね。
勤勉で何事にも頑張りやな子。私とは正反対な性格。


『……どうやら、性格は貴方に似たようですね』
今はいない“あの人”のことを思い浮かべた。



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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月3日 23時

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