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『あるならどうぞ』
道中の店で買ってきただろう菓子やドリンクを並べだす女の子達が、声をかける。
必要最低限しかキッチンに立たないため、どこに何があるかなど把握していない。ましてや、こんな大人数で集まる想定などしていなかったため、人数分のコップがあるかも怪しい。
『―――そんなにコップあったっけ？』
顔をしかめてキッチンに向かおうとすると、こっそりと刹那が声をかける。
「シンク上の右戸棚―――」
『―――ありがと』
流石刹那。
何度か家で料理を作ってくれただけあり、キッチンの物品の位置を把握していたようだ。
知らない女(いや、クラスメイトだけど…)にキッチンを触られるより、寧ろ家主よりキッチンを把握している刹那にあれこれを手伝ってほしかったが―――
皆の前でそれを言うのは、申し訳ないか。
彼女の様子を見ると、何度もうちに来ている事を、クラスメイトには伝えてない様子だし。
(―――シンク上の右戸棚…っと)
刹那に教えてもらった戸棚の中には、箱に入ったままの来客用グラスが丁度８客あった。母が用意していた物だろうが―――ある事すら知らなかったぞ。
『使ったことないから、一回洗った方が良い―――』
「了解！キッチン借りるね？私達やっとくから、家主座ってていいよ？」
「ってか、七瀬キッチン綺麗だね―――料理作ってる？」
案の定、女子の二人が揶揄いだす。『簡単な物しか作らない』と答えると、「冷蔵庫空っぽだもんね」「大丈夫？ご飯作りに来てあげようか」と笑う。
―――勝手に開けんなよ。……だから嫌だったんだ、人を家に呼ぶの。
聴こえないふりを決め込んで、リビングのソファーで頬杖をつく由唯。
視線を感じて横を見ると、ローテーブルにケーキを切り分けながら、刹那が申し訳なさそうに顔をくもらせていた。
(いや―――せっちゃんは、全然いいんだけどね。来てくれるのは、嬉しいし)
大丈夫―――を伝えるつもりで、笑顔を返すが、彼女の表情は冴えない。
正義感が強いというか、真面目な性格というか……気にさせてしまったかな。
由唯はケーキを取り分ける刹那の横にさり気なく席を取る。
『せっちゃんが気にすることないよ。人が多いと警戒するから、セツには寝室にいてもらってるんだ。』
エアコンはかけているけど、時々覗いてくれる？
こっそりと小声で伝えると、「うん、わかった―――」と、小さく頷き返した。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月3日 23時
