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好奇心に輝く緑の瞳には、暗くなり始めた会場に灯る提灯とか、美味しそうな匂いのする綿飴とか、楽しそうな声の響くヨーヨー釣りが代わる代わるに映っていて……繋いだ手を離してしまえば、直ぐに人波に駆け出して、どこかへ行ってしまいそう。
どうしたら―――振り向いてくれる?
どうしたら、君の“特別”になれるのだろう。
―――――視線を逸らさないで……こっち、むいて 刹那。
心の声が漏れ出していたかとおもった。
突然に振り向いた緑の瞳に、ドキッと胸を打つ。
「どうしたの―――…ゆ…ッ由唯くん」
名前で呼ぶ事、まだ戸惑っている様子。
『ん、何でもないよ――。せっちゃんは足、大丈夫?あっちに休めるところあったから、少し休もうか』
大丈夫かと聞けば、大丈夫だと答える事はわかっていた。だから、刹那の言葉を待たずにベンチが置かれている休憩スペースに連れて行く。後から遅れて、
「ウチは大丈夫だよ」と言うけれど、来た時より歩幅がゆっくりになっているから、多分疲れているのだろう。
近くの屋台で、小さめのペットボトルを買って戻る。
刹那はベンチで、足をぐっと伸ばしていた。
(ほら、やっぱり疲れてた)
頑張りやで、甘えることが下手…
提灯の薄明かりに揺れる刹那は、いつもより大人っぽくて―――綺麗で
ペットボトルを握りながら、一瞬声をかけるのをためらってしまった。
「あ、由唯くん」
こちらに気づいた刹那に声かけられ『お待たせ』と隣に座る。じっと見ていた事に、気づかれていただろうか。
渡したペットボトルを両手で握り、ゆらゆらと足を揺らす―――
合わせて横髪を束ねる赤いリボンの髪留めも、ふわりと揺れている。
『―――髪飾り、着けてくれてるんだね。可愛い、似合ってる―――』
「あ、うん―――ありがとう」
髪留めに触れる由唯から、刹那は視線を逸らせた。
目をそらさないで…こっちを、見て―――?
『―――せっちゃん、俺……せっちゃんのこと―――
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時