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───時間は過ぎて
テントの影に座り息を吐く。
もう少しで今日のバイトが終わってしまうのに、まだ渡せてない……。
自分の意気地のない根性に嫌気がさす。
また息が漏れた。
「どうしたの?ため息なんかついちゃって」
『ひあっ!』
頬に触れた冷たい感触にゾクッと体が跳ねる。
見上げるとペットボトルを両手に持った由唯くんがイタズラっ子の笑みを浮かべて立っていた。
隣に腰を下ろし どーぞ。と片方を渡してくれる。
『驚かさないで』と頬を膨らますも、
すぐに「驚かされたのはこっちだよ」と返ってきた。
「昨日の夜から何か変だよ?せっちゃん」
何かあった?
心配そうに聞いてくる由唯くんに申し訳がなくて俯いてしまう。
けど、
「ダメ──こっち見て」と、頬に触れた手がそれを阻止。
真剣な飴色とかち合いウチの頬に熱が篭った。
でも、これもきっとチャンスだ。
ウチは意を決して『あのね!──』と口を開く。
泳ぎそうになる目を瞬き1つでグッと我慢して
『──渡したいものがあるの』と続けた。
「渡したい、もの?」
予想と違った答えだったからか頬に添えられていた手が離れる。
ウチは小さく頷き、今日肌身離さず持っていたトートバッグからひとつの包装袋を取り出した。
手のひらサイズのそれを虚空に浮いていた彼の手に乗せる。
由唯くんはそれをしばらく凝視し、目だけをこちらに向けて「開けてもいい?」と問うてきた。
ど、どうぞ。裏返った声など気にする暇もない。
カサカサと開けられる音がウチの鼓動を早めて止まない。
「こ、れは?」
とうとう日の目を見た3色のそれを由唯くんは色んな角度から観察していた。
そんなに見られると は、恥ずかしい。
『昨日 七瀬くんに好きな色を3つ教えてもらったでしょ?』
その3色で編み込んでみたんだ。
きっと、今のウチの顔は真っ赤だろうな。
隠したいけど、それ以上にこのキラキラした飴色を眺めていたい。
『──髪飾りの、お礼……です』
気に入って貰えたかな?
ちゃんと言えた!
ウチは安堵に頬が緩むのを感じつつ、彼の反応を待っていた。
「───どう?似合う?」
右手首に寄り添う緑。
ほんのり頬を染めてはにかむ由唯くんはとても魅力的で、思わず『写真が撮りたくなるくらい似合ってる』と言葉が零れてしまった。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時