もう1人の22194【約束のネバーランド】 (ページ26)

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第９話ページ26

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吐いた息が白い。
ぼんやりと明るくなり始めた空から差した陽の光が、森の木々の隙間から溢れてくる。
洞窟の出入口に座る自分の所にも差し込んできて思わず目を細めた。
外では、夜の内に冷えて固まった水分が木の枝に白く咲き光を反射している。

ひどく、静かだ。
まるで全ての音が消えたような不思議な感覚。
耳が、意識が遠くに飛んでいきそうで……

「ｯおい」
『！』
反射的に身構え振り返ると黒……レイが絶妙な距離感で立っているのが目に入った。
気のせいか少し焦っているようにみえる。

『早いね』
もしかしてみんな起きた？
何事も無かったかのように話を振るとレイは一瞬疑う空気を出したが直ぐに引っ込めて
「いや、まだだけど」と合わせてくれた。
ありがたい。

『今、ソンジュが見回りをしてくれてるから』
「ふぅん」
言いながら自分の近くまで歩いてくると

「アンタさ。弟がいんだって？」
唐突な問いかけに目を見開く。
直ぐに姉の姿が頭に浮かんだ。

『どっちから聞いたの』
「ソンジュ」
『そっちかぁ』
「エマはムジカから聞いたって」
『まさかのどっちもかよ……』
何故こうもこの2人には口が軽いのか。
脱力するようにその場に腰を下ろした。

仮面を取り上を仰ぐと目が合う。
陽の光が反射して黒とは違う色が映っている。

『“ノーマン”』
「！」
『自分の弟かもしれない男の子』
子ども達からも似ていると言われている存在を口にするとレイは悔しそうに唇を噛んでいた。

自分は再び洞窟の外へ視線を戻す。
霜が溶け露が滴る木々を見つめながら、……ポツリ。

『生まれた時、自分の隣には誰かいた。
確証は無いけど確信はある』
「は」
『自分はさ。
その片割れに会いたいみたい』
「“みたい”？」
まるで他人事のような言い方に怪訝げに復唱してくるレイがおかしくて思わず笑った。

2人が話したってことは……

『自分を連れて行ってくれって頼まれた。
そうでしょ？

頼んだよね？─────ソンジュ』

「！」
驚く気配。

そして

「……なんでわかった」
木々の間から現れた彼はどこか気まずげ。

分かるよ。
何年一緒にいると思ってるの。
2人が人間の情報を探す本当の理由は、だいぶ前から知ってる。
昨日の夜エマ達と話しをしていることも知っている。

＊