この無慈悲な世界に能力で希望を【リレー小説】

初めて【神月いのり/ユウミ】 ページ46

いのりは、思わず硬直した。

先程まで、天秋の過去に思いを馳せていた反動も少しはあるが、それ以上に驚きがある。

手を繋ぐ…など、この長い人生で一度もした試しがない。
そもそも、血の繋がらない赤の他人と接すること自体久しぶりなのだ。

「(手、繋いだら…仲良くなれる？もっと、彼女について知れる？…あぁ、わからない)」

いのりは、己の乏しい人間関係をこのときばかりは呪った。

天秋は、手を繋ぐと心も繋がると言う。
しかし、いのりの感覚からすると手を繋ぐとは親しい間柄や細君とする行為で今日会ったばかりの者とするものではないのだ。

いのりが悶々としている間に、天秋の顔がますます真っ赤になる。

「(もう、こうなったらなるようになれよ！)」

いのりは、天秋の手をぎゅっと握った。

手を離した反動で、唐傘が風にのって飛んでいく。

「！…え？」

突然手を握られたせいか、天秋は混乱している。

「……私の、初めての手繋ぎの相手よ。天秋さん」

背の高い彼女を見上げながら、いのりは精一杯笑った。


――――
みなさん、いのりを出してくれてありがとうございます…！

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