第17話 夜久さんの気持ち�� ページ17
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Aさんと目が合う。
『ん？』と、首を傾げると、何でもないってAさんはクスリと笑った。
うわ、可愛い。
ふつうに。
この感じで微笑まれたらさ、なぁ、黒尾。
黒尾の顔を盗み見て、思わず吹き出した。
今のコイツの顔見たら、黒尾のファンの子、泣いちゃうんじゃない？
ニヤニヤというか、デレデレというか、普段じゃありえないくらい柔らかいんだよ。表情が。
なぁ黒尾、お前、その顔見せたくて俺呼んだの？だとしたらマジでイカれてる。
「Aちゃん」
「なに」
「可愛いね」
『は？』と、俺とAさんの驚いた声が重なる。
「何で今？」
「えっ、何となく」
黒尾お前、おもしろすぎる。
タイミングとかバカすぎない？さすがに。
俺、空気じゃん。
というかAさん、君は他の子みたいにキャーッ！とか言わないワケ？
こういうのにトキメクのが通常なんじゃないの？
全然驚いたり照れたりしないじゃん。
それどころか、『可愛くないから』とか言ってるし。
何？この子もイカれてるってこと？
え、マトモなの俺だけ？
勘弁してくれ。
俺が知らないだけで、このやりとり何回もやってたりする？
そんな想像すら現実に起きていそうなくらい、Aさんは平然としてるように見えた。
彼女が実は内心めちゃくちゃドキドキしてるとかだったら、たぶん黒尾は萌え死ぬな。とか思った。
「ちょっと良い？」
「ん？」「なに？」
二人が息を合わせたように、俺を見る。揃えんなよ、怖いな。
「黒尾、お前さぁ、こないだのアレ、結局謝ったんだっけ」
「ちょっ…やっくん……」
「何、アレって」
「いやそのな、あの、こないだ保健室で……」
「えっ？ああ、別に良いのにあんなの。てか、早く忘れて」
「いや〜、マジでごめん。ほんっとごめんな」
「だから良いって」
謝る黒尾と、謝るなと言うAさん。このやりとり無限に続きそうだから、俺が止めてやる。
「わかったから、二人とも落ち着け」
そう言うと、二人は同時にシュンとした。すごい揃えるじゃん。
「あのさ、今週末、二人でどっか行ってくれば？ちょうど部活休みだし。アレだよ、ほら、黒尾のお詫びも兼ねて」
黒尾が俺を見て、パッと顔をきらめかせた。
『夜久……！』と、声にならない声を上げながら。
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作者名：pomme | 作成日時：2022年5月20日 7時
