第78話 自信はあるはず ページ28
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「Aどう？見える？」
「ギリ見えないかも。あっ、まって、いた。秋、ここ立って」
「んー？あ〜！いたいた。豪炎寺くーん！A来たよ〜！」
「ちょっと秋！」
“豪炎寺”というワードで、大半の人が私たちの方をギロリと睨んだ……ように見えた。
胃がギュッとして、思わず手で押さえた。
そんな目で見ないでよ。
だいたい、あなたたちは修也の何？何でもないでしょ？
だから、睨んだって無駄。
修也の隣にいていいのは、私だけだし。
──て、言えたらなぁ。
何で言えないんだろ。
小刻みに震える指先をぼんやりと見つめた。
何も恐れる必要はないのに、浮かんだ言葉は喉の奥につっかえて、頭の中をふらふらと漂った。
甘い言葉で女の子を惑わすヒロトくん、こういう時だけなぜかめちゃくちゃモテる円堂くん。
それから、しれっと何人もの女の子からアタックされてる半田くん。などなど、見知ったメンバーが注目を集める中でも、やっぱり修也は異質だった。
いつもよりキラキラしてるように見えるのは、きっと私の目がおかしくなったんじゃなくて、あの衣装のせい。
相変わらず襟は立てたまま、スーツっぽいシャツを綺麗に着こなしてる。
修也が腰に巻いたエプロンをキュッと締め直すと、それだけで歓声が上がった。
『かっこいい…』と、思わずこぼすと、秋がうんうんと大きく頷いた。
修也は私たちに気づく様子もなく、淡々と自分の仕事をこなしているように見えた。
女の子に見向きもせず。
ああ、よかった。安心した……。
そう思ったのも束の間、ひとりの女の子が突然、修也の手を引いた。
「ねぇ、豪炎寺くん！キミって彼女いるの？」
ドクンと、心臓が大きく揺れた。
ざわめきの中、自分の心音だけがやたら大きく聞こえた。
“いる”
そう答える。修也なら、絶対。
その自信だけはあるはずなのに、なぜか、心臓がバクバクして呼吸が浅くなった。
修也が口を開いた。
その瞬間、全てがスローモーションみたいに見えた。
ざわめきが遠くに聞こえる。
ドクンドクンと脈打つ鼓動がこだまする中、たった一言、『……いませんけど』と放った修也の声が耳をついて離れなかった。
続く (更新停止中)
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作者名：pomme | 作成日時：2021年3月22日 10時
