第80話 息を潜める ページ31
．
「一本ナイッサー」
キャプテンの声が響く。
それを合図に、みんなが表情を引き締めた。
掌に乗せたボールを、しゅるりと器用に回転させる、いつものルーティン。
軽く走りながらボールを高く上げ、飛ぶ。
美しい流線を描きながら、狙いを定めてボールを叩く。
鈍い音と共にエンドラインギリギリに落ちると、君は『よし』と小さく拳を握った。
潔子さんと仁花ちゃんが手を叩きながら『影山くんナイス』とか言ってる。
余計なことしたら君の邪魔になっちゃうかなって思ったから、私は至極控えめに同じことをした。
私の声聞くと、きっと調子狂うでしょ。
わかるもん。それくらい。
君の反応見てたら、嫌でも。
こんなこと、今まで一度も無かった。
息を潜めて試合を見守る。
なるべく、君の視界に入らないように。頭の中から、思考からするりと抜け落ちるように。
こんなことしてちゃ、誤解なんて解けない。
そう、わかってるのに。
わかってるのに、ね。
傷つけたのに、これ以上傷つきたくないって思っちゃってるの。
おかしいでしょ？
少し時間が経てば、君はまた柔らかい笑顔を向けてくれるんじゃないかなぁって、淡い期待も抱いてるの。
．
「じゃあ、15分休憩な。時間が来たら、とりあえずここに集合してくれ」
気だるさ全開の鵜飼コーチが、ぽりぽりと頭をかきながら、そう告げた。
外は茹だるような暑さだ。
みんなそれをわかってるから、外には出なくて、体育館の壁に寄りかかって、首に保冷剤を当てたりしてる。
「潔子さん、私、お手洗い行ってきます」
「は〜い」
お手洗いを口実に、外に駆け出した。
ここにはいられない。
気まずくてヒリヒリするのは、ちょっとつらいから。
向かったのは体育館から一番遠いトイレ。
ここなら、誰も来ないだろう。
そう期待していたのに、私の耳は自分のじゃない足音を拾った。
ゆったりとこちらに近づいてくる気配。
『はぁ』と、小さくため息を吐きながら、後ろを振り返った。
「黒尾さん、私にGPSでも付けてます？」
「やだなぁ、人をストーカー呼ばわりしないでよ。……で、Aちゃん。影山とは上手くいってる？」
イカれてるよ、この人。
上手くいってないの、あなたのせいなんですけど。
そんな言葉は飲み込んで、『余計なお世話です』と、口をつぐんだ。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜！！🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (
レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます！！！黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう！もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜！ (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう！好き！コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に！愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます！ (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます！！！嬉しすぎて、もう泣いちゃう！！素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pomme | 作成日時：2022年1月20日 23時
