春の匂い.4 ページ38
「……シャオくんと会えないのか。……寂しくなるなあ」
目を閉じるとシャオくんとの思い出が浮かぶ。初めて出会った場所や、一緒に見た花畑。楽しかった記憶には必ず隣にシャオくんがいた。
「月に一回、いや半年に一回でいいから会いたいな。あ、手紙も送るね。返事は書かなくてもいいよ」
「えっ待って？Aどっか行くん？俺聞いてへんよ」
私の左手を握る彼の目は不安げに揺れていて、笑って欲しくてそっと指を絡めた。
「どこにも行かないよ？」
「ええ？」
「シャオくんこそどこか行くんでしょ？せめて出発する時には言って欲しいな」
「いやいやいや、えっどういうこと？」
「どういうことって……そのままの意味だよ？」
沈黙。
私が首を傾げるとシャオくんも鏡写しのように動く。
「……えっと、私は戸籍が軍に置いてあるから、そのまま住むよ。でもシャオくんは出ていってどこかに住むから、あんまり会えなくなるでしょ？」
これで合っているかと顔を見ると、ああ〜〜〜〜〜！と声を上げて頭を抱えていた。
「シャオくん！？」
「いや……俺、Aと一緒に住んでる体で話してたわ……」
「一緒に……、それ、は」
「うわやっちまった……順序とか考えてたのに……」
うずくまるシャオくんに合わせて私もしゃがむが、頬はものすごく熱い。酔いの熱ではないそれは、ドクドクと心臓の音をずっと早めていく。
一緒に住むというのは、恋人と同棲という意味とは異なってくる。つまりは、
「……えーっと、シャオくん」
「マジごめん忘れて」
「結婚、しませんか？」
「……したい、です」
腕の隙間から聞こえる声はか細くて、でもはっきり聞こえた返事。繋いだ手を両手で握れば、照れた顔のシャオくんが拗ねたように唇を尖らせた。
「こういう時はかっこつけさせてや」
「えへへ、私の勝ち」
たまらなく好きだ。ずっと好きだ。シャオくんとなら怖いものなんて無い。いつからだろうか、明日もシャオくんと一緒にいられたらって考えるようになったのは。夢見るような少女時代は既に血に落ちてしまったが、そんな些細な願いは、もう叶ってもいいのではないか。
みんなも、もう許してくれるだろう。
「……変わったなあ、A」
「えっどこが？なんか変かな？お、お酒のせいかもよ？」
酒とは恐ろしいものだとあたふたしていると、頬杖をついたシャオくんは愛おしげに目を細めた。
「んーん、全然ちゃうよ」
「…………？」
「笑った顔がすごい素敵になった」
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さとうきび(プロフ) - えるをん×@×IAさん» コメントありがとうございます！これからも精進してまいります。応援、よろしくお願いします！ (2018年4月5日 22時) (
レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
えるをん×@×IA(プロフ) - とても素敵な作品だなと思いながら読ませていただいている者です。これからも頑張って下さい(´q`) (2018年4月5日 0時) (レス) id: b8e4739678 (このIDを非表示/違反報告)
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