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ゆめゆめゆられて.5 ページ15

息の仕方が分からず、不定期な呼吸が肺を圧迫した。
口から零れるのは、空気の塊だけだった。

「ん、っ……」

不意に唇を塞がれ、息を止められる。
半開きの口から入ってくるのは、少量の息。
苦しくて身をよじらせるが、肩を掴まれているので逃げられない。
「ふっ、は、あ」
少量の息でも、長時間続くと肺が悲鳴をあげてくる。
一筋流れた涙。塞いでいたものが離れる。
「はー、っはー」
未だ苦しい呼吸は、脳がうまく回らず機能させようとしない。

「んむ、」
再び塞がれ、空気が送りこまれる。
貯めきれなくて、やっとの思いで息を吐いた。ゆっくり、大量に吐き出す。
「くるし、い」
肺を空っぽにすると、今度は酸素が欲しくなる。
途切れ途切れに言葉を発すれば、冷たい空気が流れこんできた。
私は大きく、ゆっくりと呼吸をした。心臓も規則正しく鼓動を初めていた。

しばらく息をしていると、周りの状況が見えてくる。

「しゃお、くん」
「……大丈夫か、A」

心配そうに、私の肩を掴んだまま顔を覗きこんでくる。
「過呼吸、治った?」
どうやら私は過呼吸だったらしい。道理で息ができなかったわけだ。
「治った、かも」
「良かった……その、ごめんな。いきなりで」
恥ずかしそうに、頬をかくシャオくん。
「あ……」
思い出すと、体温が一気に上昇したのが分かった。
そうだ、私、さっきシャオくんに……
「いや、こっちこそごめんなさい。私のせいで……」
「いや、Aはほんま悪くないって」

「……でも、ファーストキスがシャオくんで嬉しかった」

大好きな人とのキスは、それはとても幸福なもの。そう言われているほどだ。
実際あまりしている感覚は無かったが、今となれば救われるような気持ちだった。
思い出すように唇を指先で撫でていると、不意にシャオくんと目が合う。

「ファーストキスなん?」
「えっ」
「俺が、Aのキスした相手の一番?」
「し、シャオくん?」

食い気味に尋ねてくる。そ、そんな食いつかなくても。というか、顔が近いよ。

「……俺も、嬉しい」
「えっ……?」
「だって、最初は手も繋げなかった」

シャオくんの手は今、肩に置かれていて、もう片方の手は繋がれている。
なんだかひどくそれが嬉しくて、ぎゅっと握り返した。

「……ふあ……」
「眠い?」

安心すると眠くなってきた。くらりと体重をシャオくんの方へ傾ける。

「今日さ、……一緒に寝ていいかな?」

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さとうきび(プロフ) - えるをん×@×IAさん» コメントありがとうございます!これからも精進してまいります。応援、よろしくお願いします! (2018年4月5日 22時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
えるをん×@×IA(プロフ) - とても素敵な作品だなと思いながら読ませていただいている者です。これからも頑張って下さい(´q`) (2018年4月5日 0時) (レス) id: b8e4739678 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さとうきび | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年12月17日 13時

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