人狼ゲーム

１日目・夜 ページ10

人狼side


狼「……何で人狼引いちゃったんだろ」


掌から少しはみ出るサイズのカードに文句を呟いてみた。


メンバーはみんな優しくて、面白くて、かっこよくて。


１人１人個性が際立ってて大好きだった。


なのにメンバーを殺さなきゃいけないなんて、理不尽極まりない。


そう思った途端。


部屋にも設置されていた小型テレビに文字が現れた。









『人狼陣営の方へ

きっと貴殿方は襲撃を躊躇うでしょう。

しかし、もし襲撃を行わなければ──

９人全員、まとめて処刑致します。

皆様の懸命な判断を期待しております』









狼「念入りだな……」


でも、これで９人全員で生き残るのは不可能になった。


本当に、この手で、メンバーを──


恐怖から胃の中の物が全部沸き上がってくる。


だけど、それを遮るように午前０時を告げる鐘が鳴り響いた。


狼「……外、出るか」


物音を立てないように部屋の扉を開く。


外は静まり返っていて、自らの手でメンバーを殺すという実感はさらさらなかった。


？「お前、人狼？」


背後から唐突に声をかけられる。


今の時間帯に廊下に出ていいのは人狼だけのはず。


ってことは、この人も人狼──


？「何か、嫌だよな。ずっと一緒に過ごしてきた仲間を殺すなんて」


狼「それは同じだよ」


自分も振り返って、彼の目を見つめた。


全員で築き上げてきた平穏を壊したくない。


それはメンバー全員が合致してるはず。


でも、殺らなきゃ殺られるんだ。


？「……それで。お前は誰を襲撃するのがベストだと思う？」


狼「すごい迷ったんだけど───かな」


ホントは"あの人"を襲撃したいんだけど。


もしその人を騎士が守ってて。


１度きりの失敗で、自分たちが占い師から黒出しされたら終わりだからね。


？「それなら、今夜は──」


あいつだ、と言って彼は１つの部屋を指差した。


狼「……分かった」


？「ごめんけど、今日の襲撃はお前１人でやってくれ」


狼「……え？」


何言ってんの、この人。


正気？


？「俺はその間に吸血鬼と接触してみるわ」


そう言い残して彼は去っていった。

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