ディアハイヒール (ページ5)

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渡辺side

午前７時４５分。

いつもならセンパイに会うために学校へ着いてる時間だけど、今日は土曜日。

部活も休みだからAセンパイに会わなくて済む。

昨日あんな現場を目撃しちゃったから、いくらAセンパイとはいえ会いたくない。

だから休日なのが救いだった。

渡「あ、化粧水切れてる」

いつも通り朝の準備をしていると、化粧水がないことに気づいた。

あー、買いに行かないと。

だるいな。

独り言をぶつぶつ呟きながら、コンビニに向かう。

「……しょっぴー？」

渡「うわ、センパイ！？」

「何よ、その幽霊でも見たような反応は笑」

まさか朝っぱらから会うとは。

よりによって肌のケアもしてない時に。

ツイてねぇな。

いや、ある意味ラッキーなのか？

今なら"康二"って人いないし、昨日のこと聞き出してやろう。

渡「センパイって"康二"って人と付き合ってるんですか？」

俺が発した"康二"というワードに分かりやすく顔を赤らめるセンパイ。

当たりかよ。

あー、俺の恋終わったな。

「実は、康二と付き合ってるの」

知ってるよ。

なんて言えるはずもなく、ただ黙ってセンパイを見つめてた。

やっぱりAセンパイは国宝級に可愛くて、凛とした強さも持ち合わせていて。

好きだなって思う反面、無意識の内に嫌いになろうともしてた。

もう分かんねぇな、自分の気持ち。

「でも、しょっぴーのことも好きだよ？」

渡「……は？」

何言ってんの、センパイは。

彼氏持ちなんだよな。

そんなこと言っちゃ浮気に──

「もちろん後輩としてだけど」

そう言ってAセンパイは悪戯っぽく笑う。

じゃあ、俺がセンパイと同い年だったら恋愛対象になれてた？

"しょっぴー"じゃなくて"翔太"って呼んでくれてた？

何をどう願っても現実は変えれない。

分かりきってんのに、妄想は膨らむ一方だった。

これも全部、Aセンパイのせいだから。