人は変わる ページ3
お昼休み、もう皆食堂に出払っておらんなった教室で、私が休んどった分のノートを川西くんに写さしてもらう。
ちなみにその川西くんは、今私の目の前に座って今日買ったのやというパンを食べてはる。
いつもバレー部で食堂行ってるのをやめてまで残るなんて、余程の用事でもあるんやろか。
特に喋らずに手ぇ動かしとると、何の脈絡もなく、突然川西くんが口を開いた。
「お前さ、青城の同い年の……リベロの……」
『渡くん?』
「そう。そいつとまだ文通続いてんの? 連絡先交換したんだろ?」
『続いとるよー。去年からやっとるし、楽しいし』
「……前からもう一人よりも仲良さそうだったけど、そんなに仲良いの?」
もう一人って、矢巾くんかな。文脈的に。
『せやね、仲ええよ』
「じゃあ、そいつが一番“美しい”人?」
彼は、無表情のまま首を傾げる。射抜くような鋭い目と違うけど、会話に関心のない目でもない。
川西くんがこないなことに興味があるとは思わんかった。
『……君は、言葉通りのことが聞きたいん? それとも誰が一番かを聞きたいん?』
「後者。それを聞いてくるってことは、その渡って奴が一番じゃねぇのな」
『そもそも美しさに順位はない。せやから、答えようがないってのが正確やわ』
「え、マジでねぇの?」
『そうやと思うけど。少なくとも、私は美しさに差を感じたことはあらへんよ』
「ふぅん……」
愛情とかも順位つけるもんやない言うやん、と言えば、彼は微妙な、納得したようなしてないような表情になりつつも言及するのをやめて、少し不満そうなまま窓の方に目を向けた。
んー、まぁ実際ホンマのことやしねー。
そういう情に限らず、優劣のつけがたいものというのは、誰にやってあるんとちゃうかなぁ。
『……あーでも、誰が一番目ぇ引くか、とかはあるかな』
そう小さく零せば、彼は横に流しとった目をすぐにこちらに向け直す。
「誰?」
『それは内緒やわ。……その人がいつまでそうであるかは、わからんし』
それこそ今年に入って、私はその変化を目の当たりにしたばっかりなんやから。
あの人を、彼らと同様だと思っとるわけやない。
でも、所詮他人のことを軽々と断言するのは、私にはできない。
「……ふぅん」
川西くんはほんのわずかに声を沈ませて、再び私から視線を外した。
2人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ta0628tm0105(プロフ) - 続き待ってます! (2020年9月26日 8時) (レス) id: 0ed1a1911f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べれと | 作成日時:2018年10月28日 13時