夜明けのパンセ ２

３９−２ ページ24

『そういえば昨日まじで笑ったんだけど、部屋にカセットとＣＤが置いてあるんだけどね』

島の不便なところと愚痴をつらつらと語ったあと、ミンギュがおもむろにそう言い始めた。

『ちょっとだけ昔の歌手のＣＤなんだよ。それ聞きながらいい曲だねって懐かしい感じで言ってたんだけど、バーノンが急に"どうしてChocolate先輩のＣＤが無いんだ！"って怒り出したんだよ。どんだけヌナのこと好きなんだよって話。あれもうオタクだね、オタク』
「いつもそう言うけど、あんまりピンとこないんだよね。だってバーノンくんっていっつも挨拶だけしてどこか行っちゃうし」
『わかってないなヌナは〜。Aヌナがいるだけで、あいつまじで緊張してるから。バーノンは本当にずっと前からヌナのファンなんだよ』
「ありがたいことだよね」
『あ〜ほんと昨日はいっぱい笑った！』
「やっぱり漂流楽しそうじゃん」

そう言うとミンギュはまたヌナはわかってない！と騒ぎ出した。でもさっきから声が楽しそうだけど？ということは仕方ないから黙っておくことにする。

「でも、私が漂流したら毎日寝てるかもしれない。ていうか寝たいなぁ」

と私がそう言うと、少しだけ拗ねた声でミンギュは『ヒョンと同じこと言わないでよ』と言った。

「ジョンハン？」
『ヒョンずっと寝転がってる。今も向こうのほうでぼーっとしてるんだよ』
「想像できる」
『はぁほんとちょっと手伝ってくれても...違うってば、ヒョン！やめて、待っ、』
『A？』

ミンギュが突然焦った声を出したかと思うと、声の主が変わった。

「ほんと悪魔だね、ジョンハナ」
『ミンギュがさぁ、こっち見ながら電話でひそひそ話してるわけ。ばれるじゃんそりゃ。声でかいからヌナって聞こえるし、そんなの絶対お前じゃん』
「ずっと寝てるんだって？だめだよ、弟たち手伝ってあげなきゃ」
『手伝ってる手伝ってる』
「それは絶対手伝ってないやつだ」
『そんなこと言って、お前だってもし漂流してメンバーの誰かが料理とかなんでもしてくれたら寝るだろ』
「否定はできないよね。ミンギュ諦めて、ファイティン」

『あいつ今拗ねて寝転がってるぞ』

遠くのほうで『キム・ミンギュ！でかい！邪魔！』というスンチョルの声が聞こえて思わず笑いが零れる。電話の向こうでジョンハンの笑う声とミンギュの悲愴な声が聞こえた。

４０−１→←３９−１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す