蒼い月の詩 (ページ38)

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38話ページ38

木暮のキャラバン侵入事件(蒼龍が命名)のせいで近くにあったコンビニの駐車場にキャラバンを停めた。瞳子が漫遊寺中サッカー部監督に連絡をとっている。皆で窓から瞳子の様子を見ていた。

　そういえば先ほどから木暮が静かだなと瞳子から木暮へと皆して視線を移した。座席に座りキュッキュッと音をたててマジックでなにやら書いている。
　その中で栗松が木暮をチームに入れることに反対だと言っている中、突如として目鏡が大声で叫んだ。

「僕のレイナちゃんがぁぁぁ！」

　なにか書いていたのは目鏡のもってきた美少女フィギュアに落書きをしていたからだったようだ。目鏡はフィギュアに頬ずりしながら涙を流しているが木暮はイタズラが成功しご満悦のようである。

「ぼ、僕もこんな奴が雷門イレブンに入るのは反対です！」

「フン、たかがオモチャくらいで」

　その界隈の人たちに聞かれたら殺気を向けられそうなことを言った木暮に目鏡が「なにをーーー！！」と叫び返す。

「あーー！！」

　目鏡の次は栗松が叫んだ。

「今度はなんだよ？」

「俺の雑誌がぁ…」

　フィギュアだけでなく雑誌にまで落書きをしていたようだ。表紙の選手には髭やら天使の羽やらがかかれている。

「ウッシッシッ！」

「木暮くん！」

　イタズラが2度も成功したことを愉快そうに笑っている木暮を春奈が怒ったように呼んだ。

「皆に謝りなさい！ちゃんと謝らないと漫遊寺に帰ってもらうからね！」

　まるで母親が幼い子どものイタズラを叱るような口ぶりで木暮に言った。途端に木暮はシュンとして申し訳なさそうに「…ごめんよ」と謝った。

　謝ってもなお目鏡と栗松は木暮を睨んでいるが円堂が間に入って「本人も謝ってるんだからさ。な、目鏡、栗松」

『あ』

　円堂が二人を諭している足元で木暮が円堂が履いている靴のくつ紐の左右を一つに結んでいるのを見た蒼龍は小さく声をもらした。
　隣にいる吹雪も蒼龍の声で気づいたようで「あ」と同じく声をもらした。