遥かなる未来へ～～～１ (ページ10)

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１０：アロマページ10

「・・・！」

櫻井は大野から目を外すことができなくなった。

その表情には、言うことを聞かない自分の神経を叱り飛ばすかのような苦しみが滲み、どんどん息が大きく、大きく上がっていった…

不意に丸まっていた大野が身じろぎし、俯いていた顔を上げた。

完全に力が抜けて微かに片側に向けて傾いだその横顔…

(…きれいだね…智君…本当に、きれいだ…)

櫻井は自分の手を強く強く握りしめ、どうにか理性が勝った。

そのまま枕代わりの座布団を大野から少し離して、横になった。

もちろん眠れるはずなどない。ここにこうしてじっとしていることが、苦痛だ。

(俺が智くんにこんな感情を持ったことに対する、罰なの…？)

固く目を閉じたその時、部屋へ近づいてくる足音が聞こえた。

櫻井をこの煉獄から連れ出してくれる、救いの足音だった。

「大野くーん、櫻井くん！起きてください！」

「…あ、もう時間？」

「えぇ、大野くん早めに入ってもらいたいんで。」

「…智くん、智くん？時間だよ？起きて～」

かなり爆睡していたらしい大野をようやく起こして、二人は次の仕事先へ向かった。

「智くん、頑張ってね♪怪我、しないでね？」

「ん。じゃぁね、翔くんもガンバです♪」

「ガンバですっ♪」

大野を降ろして、車は櫻井の仕事場へ向かった。

今日の出来事で、どうしても櫻井は自分の気持ちの深さに気付かざるを得なかった。

(俺は…俺はどうしたらいいの？どうすべき？俺は…どうしたいんだろう？)

自問自答を繰り返し、なかなか出ない答えを求め続けた。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿

♪～～～♪

打ち合わせが終わり、本番前の時間。

この間に休憩や食事の時間を取ったり、突然飛び込んでくるニュースに備えたり。

他の出演者と情報交換などするのが常だ。

その合間に携帯をチェックして、メールの中に大野からのものを見つけた。

「…智くんだ…」

櫻井はとたんに体の中にほの暖かいものが生まれるのを感じた。

いつもそうだ。

特に生放送の前後に送られてくる彼からのメールは、緊張をほぐしたり、また収録後の達成感をくれたりする、待ち遠しいものなのだ。

普段仕事や就寝前にリラックスするためアロマオイルを焚くことがあるが、そんなもの不要なくらい。

すべての緊張や不安を取り去ってくれるのだ。