婚約者を幸せにしたい。【まふまふ】

45 ページ45

.







その夜、私は次の日から始まる授業が不安すぎて目が覚めてしまった
本来ならば夜遅いこの時間に女性は部屋から出てはいけないのだ

それはとても外聞きの悪いもので、未成年なのに男女の関係ができているんじゃないかと疑われてしまうからである




というか、付き人ひとりも付けずに外に出歩くこと自体が大いに間違ってるんだけども





でもたまには昔に戻った気分でひとり呑気に草むらを歩きたかったのだ








部屋の鍵を開けて、私はこっそりと寮から抜け出した

少し欠けた月が真上にあって、星もキラキラと光っている
いい天気で何よりだ





どうせこんな時間には誰も起きてはいない
そもそも明日から授業なんだから、みんなもいつもより早く寝ていることだろう





ネグリジェが見えないように大きな毛布を体に巻き、寒さごなしにフードを被った

これでだいぶ夜風が遮られて温かい





確か寮の裏手には畑があると聞いていたのでそこに行ってみよう

さすがに森は獣がいると聞いているので1人では近づけない





寮の外からぐるりと回って裏手に回る
分かりやすく木の柵があって、畑が広がっていた


きっとここで作っている野菜が毎日のご飯に出てきているのだろう
……となると牛や豚なんかも居るんだろうか




ぐるりと見渡すけど、さすがにそんな匂いのするものは貴族様の住む近くに置いていなさそうだ







｢うわぁ、懐かしい……アカナノソウだ｣




昔森でよく取って家で食べていた

酸っぱい葉っぱだけど、焼くとその酸っぱさがどっかに飛んで甘さが出てくる不思議葉っぱ



平民の間ではアカナノソウは自生しているものであって、こうやって育てるものではないけれど確かに同じものだと思う




試しに周囲に誰もいないことを改めて確認してから、ひとつ葉っぱをちぎって食べてみた





｢んんんーー！すっぱい！｣





この酸っぱさは間違いない
お母さんの不注意でサラダに混じって入れてしまった時の酸っぱさを思い出した




｢だ、誰ですか！｣

46→←44

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す