私に彼を会わせて下さい【そらる】

6 ページ29

.




｢───い。お───。起きて｣


｢はっ……。あ、おはようございます。｣


いつの間に寝てたのか。起きて早々そらるさんの顔が目の前にあるというのは……天国以外の何物でもない


｢あー、起こさない方が良かったのかな｣


｢いえ、大丈夫ですよ｣


上半身を持ち上げ、そらるさんに向き合う
火照った体が妙にふわふわして、夢心地だ


｢その、お粥出来たから……。食べれる？｣


｢はい、頂きます！｣


元気すぎっと笑われ、笑っているそらるさんに見とれて
あぁなんと幸せなひと時なのか


｢はい｣


｢えっと……？｣


すっと細いながらも筋肉質な手が私の目の前にある
真っ白いその手は私が大好きなもので、それが私の前に差し出されているのだ


食らいつきたくて仕方ない


という冗談はさておき


｢急に立つとフラってしない？俺はするから、ほら｣


なんと優しい方なのか
画面の向こう側とかでは

“気だるげ”
“めんどくさがり屋”
“クール”

その三拍子であったのに、この方はこんなにも気を回せる優しい人なのだ


｢ありがとうございます｣


差し出す手は震えている。
寒いという理由なわけが無い
緊張しているのだ


ぐいっと優しくゆっくりと持ち上げられ私も足を床にしっかりつけて立ち上がる

そらるさんの言う通り一瞬ふわりという感覚が襲い、ぐわーんっと1周してから平衡感覚を掴む


｢大丈夫？｣


｢はい、大丈夫です｣


テーブルの上に湯気がほわほわとでているお粥
梅干しだけが色もので、切ない食べ物だ


手を引いてもらいながら席につき、そらるさんはお向かいに座った

手を合わせて、いただきますと呟く

ありがたさの余り目頭が熱くなった
そらるさんの手料理を食べられる日が来るなんて昨日の私は思ってただろうか


ホカホカと湯気がでているお粥にスプーンを差し込み、すくい上げる
ふーと息を吹きかければ空気の流れが見える


早く食べたくて仕方なくて、スプーンを口に持ち入れた


｢美味しい……？｣


｢……私生きててよかったです｣


｢ごめん。ちょっと意味わからない｣


心の声が漏れていたようで、美味しいです。ありがとうございます。
なんてテンプレの言葉を改めて吐き出して、それを埋めるようにお粥を食べ進めた

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す