まっくろな君 〜影浦雅人〜 Ver.2

episode77 ー何かが違うー ページ39

ーA視点ー


あたしはあの日、二宮さんに

『地獄のグラスホッパー訓練』

に付き合ってもらった後、恥ずかしい事にそのまま寝てしまったらしい。

しかも、あたしが二宮さんの肩に寄りかかって寝てしまったせいで、二宮さんは帰れなかったらしい。

本人は「気にしないでいい。」と言ってくれたが、こちらとしては気にしてしまうに決まっている。

二宮さんにどう謝罪しよう…なんて考えながら学校に向かっている途中、カゲがいた。
昨日は照れ臭くて話しかけられなかったが、こちらとしては好きな人とは沢山話したい。

あたしは、自分にとっての精一杯の勇気を出して声をかけた。

「あ、カゲ！おはよ〜！」

あたしは、緊張で震えそうになる声を必死に平常に保ちながら話しかけた。

「ん。」

カゲはそれだけ言うと、目も合わせずに1人でスタスタ教室まで歩いて行ってしまった。

え…？

一言？

あたしは、違和感を感じた。
だって、いつものカゲだったらニッて笑いながら「はよ、くんのはえーな。」とか、ついてもないのに「寝癖付いてんぞ」とか言ってくる。

つまり、絶対一言では返さないのだ。

それなのに、今のカゲは目も合わせないどころか、ニコリともせず一言で去ってしまった。

何かしてしまっただろうか？

そう思ったが、特に何かした覚えはない。
強いて言うなら、昨日一緒にボーダーに行かなかった事くらいしかいつもと違う事はなかった。

けど、カゲはそれくらいじゃ怒らないし、そもそも怒る理由もない。

なら、一体なんなんだろう…？
それとも、あたしの考えすぎ？


あたしは、モヤモヤとした感情を抱えながら授業を受ける事になった。

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