赤【tntn】 ページ5
赤【tntn】
「俺、もうあかんかもしれん。」
「…なにが？」
「赤い色を見ると、血が騒いでまう。」
それはたぶん遺伝子に刷り込まれたレベルの悩みだと思う。
有名になった実況集団の一人、トントンは私の仕事の上司だ。結構前に私が実況動画好きだとバレたとき、生声動画あげたばかりの上司は「試しに見て感想聞かせてくれへん？」と不安げに言ってきた。
それ以来、私はファンになったけど仕事となれば話は別。…まぁ声はそのままだから意識するなって言われると無理あるけど。
「病気なんかな。」
「そうですね。その名もHoIソ連病です。」
「せやよなぁ…もう今日もAちゃんの、その…唇？見て思いだしてもうたもん。」
少し照れくさそうに白状した上司の言葉につられ、スマホの画面で自分の顔を確認する。
一昨日買ったばかりのルージュによって色づいている唇、今までで一番赤い色なんだった。
ソ連の血を騒めかせてしまうのはなんか申し訳ない、しかしこの色を選んだ理由は何を隠そうソ連色だなと思ったが故。まさかこんなことになろうとは。
「末期なんかな…俺ってHoIキチなんかな…。」
「ちょ、本気で落ち込まないでください。」
私のちょっとした遊び心でどんよりし始めた上司。こうなると私まで本気で申し訳なくなる、落ち込ませたくてこの色にしたわけじゃないのに。
確かにソ連色だから選んだっていうのはある、だいたいなんでソ連色だから選んだのかっていうと…動画内で赤の大地で輝く上司が好きだから。イキイキしていて楽しそうで好きなんだ。
いや、動画の中だけじゃない。トントンという画面のなかの人だけが好きなんじゃない。
「分かりました、明日からはもっと薄い色のルージュにします。」
上司そのものが、好きだから。
遠まわしな小さいアプローチだったのに…裏目に出るとは。あーあ、と肩を落とせば「あ、そうやなくてやな。」と上司の焦った声。
眼鏡の奥、ちょっとうろつく瞳。その瞳に映った自分の唇は思っていた以上に赤く見えた。これは完璧にソ連色。
「似合っとるで、すごく。」
「…赤色、ですか？」
「お、おぉ。ええと思う。」
そして上司の顔色も、ソ連色。
「じゃあ明日も明後日も付けてきていいですか？」
「ソ連の色でええなら…。」
唇に赤い色を塗ると、なんでだろうな。領土の一部になったような気持ちになる。ソ連の、トントンの、上司の、征服するものの一つになった気分。上司も密かに、そう思っていたらしい。
2016/05/13
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帽子かぶり(プロフ) - 雛菊さん» これからは今までとは少し違う感じの作品になりますが、最初の頃の気持ちを忘れずにやって行きますのでどうぞよろしくお願いします(*’ω’*)コメント、そして最後までのお付き合い本当にありがとうございました！ (2017年5月27日 17時) (
レス) id: 8c87802349 (このIDを非表示/違反報告)
帽子かぶり(プロフ) - 雛菊さん» 初めまして雛菊様、たくさんの嬉しい言葉本当にありがとうございます!誰かの心に響けばいいなとは思いながら書いていましたが、こうして雛菊様から言葉を貰うと感極まる物がありますね(笑)まさか有名な雛菊様からこんな嬉しい言葉を貰えるとは…書いて良かったです、 (2017年5月27日 17時) (レス) id: 8c87802349 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - きっと貴方様の小説で国民は増殖したのだろうと確信しております。私もその一人ですから（笑）これからも細やかながら応援しております。素敵な作品を今までもこれからもありがとうございます。連投長文失礼致しました。 (2017年5月26日 17時) (レス) id: b42dc9bdfb (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - ラストのgr小説は最後を飾るのにぴったりの最高に美しい話でした……！あとがきを読んでいて引退するのかとヒヤヒヤしてしまいました。長編連載おめでとうございます。帽子かぶりさんの作品を読み続けられることが本当に嬉しいです。 (2017年5月26日 17時) (レス) id: b42dc9bdfb (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - 短編完結おめでとうございます。ハマりたての頃占ツクで帽子かぶりさんの小説を発見し文才発想器用さその全てに惹かれ、夢小説読者生活○年の中で初めて筆をとりました。それ故短編の完結は非常に感慨深いです。 (2017年5月26日 17時) (レス) id: b42dc9bdfb (このIDを非表示/違反報告)
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