検索窓
今日:4 hit、昨日:6 hit、合計:14,963 hit

2,人間と獣の違い ページ5




​───哲学は嫌いだ。


 全く離れようとしない唇に舌の感覚が無くなってきて、もう食べられてしまったのでは無いかと錯覚してきた。ビクともしない胸板を手で押して、何度も叩いて声を上げた。


「ん、…むっいやっ…!!」
「…っ…!!」


 ガッ、と私が三途さんの舌を噛んだ。最後の抵抗には弱過ぎたかもしれない、でも三途さんはそこでを動きを止めた。ちゅ、とリップ音を残して離された唇が私の唇と血が混じった糸を引く、三途さんは何も言わなかった、ただ青ざめていて自分の血で塗れる唇に触れて、後退りしていく。まるで恐ろしい何かを見たような目をして。


「…やっ…ぱり、……ッ悪い、今日は帰る」


 それはきっと本当の彼だった。敬語を使って外向けの愛想笑いを浮かべる“三途さん”という人ではなく、素のあの人だとすぐに分かった。彼はフォーク、ケーキの私は彼の捕食対象。簡単な事だった、彼は私の血の匂いでそのフォークとしての本能に従ったまでで私を食べようとした。恐ろしくて、涙がでてきた、怖かったはずなのに私の中の奥に内在するケーキとしての本能は、興奮と( )び。

 私はケーキとして食べられることをどこかで望んでしまっていた。それは私が予め神にでもそうだからと定められた運命なのか、もとより私がどこかで彼に惹かれていたのかは分からない。何より今確実に確信を持って分かることは私はもう手遅れであの肉食獣のような瞳をした三途さんの虜だった。アイスでもある私の指先がほんの少し溶けるようなそんな熱を感じるほどに。

 そう私は同時にアイスだった。つまり、私と三途さんは確実にもう結末は決まったも同然。ケーキとフォークは運命的に惹かれ合うと言われるように、アイスとジュースも運命的に惹かれ合うと言われている。彼は私を溶かす甘い甘いジュース。私はケーキとしてもアイスとしても、いつか彼の手で直接殺されてしまう、そう今日たった今分かってしまった。


「…あ、そういえば生地だけ焼いてたんだ」


 じゅうぅ、と真っ黒になってしまったたい焼きの生地を型から出してそのまま生ゴミに捨てる。それはまるで、いつか訪れる私の最期のようだった。




評価あまりに一気に下がったので荒らし…なのかな…一先ず、順位ありがとうございます☺️🤍

⥥→←⥥



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (95 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
82人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

パチンカスヱ(プロフ) - 凛愛さん» ありがとう😌💕こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとう😌 (2021年12月30日 8時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 完結おめでとうございます!表現ひとつひとつが刺さるお話でした…!!たった一度の恋をこんなにも儚く美しく書ける文才に感嘆するばかりです。書いてくれてありがとう!!ココくんの新作も楽しみにしてます🥺🥺 (2021年12月26日 20時) (レス) @page17 id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - 完結おめでとう!!泣きました…素敵なお話をありがとう…😭😭 (2021年12月26日 13時) (レス) @page17 id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 桜峰瑠璃さん» 嬉しいです……!!!! 一緒に出頭しましょう🥰 (2021年12月2日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
桜峰瑠璃(プロフ) - ヤバい!!!全性癖にぶッ刺さる!()しゅき…興奮する!!!!!(通報案件) (2021年11月30日 17時) (レス) @page5 id: 643076eff9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:パチンカスヱ x他1人 | 作成日時:2021年11月24日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。