あなたが待ってくれている日常 1/1 ページ3
小学校から帰宅し玄関のドアを開けると、慌ただしい足音がどんどんと近付いてくる。
｢おかえりっ！｣
跳ねている髪をぴょんぴょんと動かし元気よく出迎えてくれたのは______ジョセフの姿だった。未だにこの幸せな光景に慣れる事が出来ず、新鮮な気持ちで胸がじーんと温かくなるのを感じる。
ジョセフと打ち解けてからはお互いの家をよく行き来するような関係になり、ジョセフはほぼ毎日昼時は私の家で過ごしている。
ただいま、と返すとジョセフは満足そうに顔をほころばせた。
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｢しょうがっこうってたのしいの？｣
｢うん、楽しいよ｣
宿題で出されたドリルの問題を解いていると、隣で白紙に色鉛筆でお絵描きをしていたジョセフが探りを入れるかのように問いかけてきた。
やはりこの光景も未だに慣れない……前は大抵私の存在を無視してつまらなそうにアメコミばかり読み漁っていたからかなぁ。そんな心情を隠しながらなんでもない風に言葉を返す。
本音を言うと｢楽しい｣と｢楽しくない｣のちょうど中間あたりなのだが近いうちに小学校へ入学するジョセフにそんなこと口が裂けても言えない。どう考えたって不安がるだろう。
私の返事がお気に召さなかったのかジョセフは頬を膨らませて｢へー｣と色鉛筆を片付けもせずに立ち上がり部屋の隅っこで体育座りを始めた。どうして拗ねているか分からず、たまらず後ろから抱きしめるが依然としてむくれたままだった。
｢ぼくもはやくしょうがっこうにいきたい｣
数分その状態でいるとつっけんどんな口調でジョセフがそう漏らした。どうやら行けない事が不満だったらしい。
｢私もそうおもう。JOJOが私の学校にはいったらやすみじかん一緒にいれるし｣
どうしようもない事で駄々を捏ねてもしょうがないと判断したのか、ジョセフが｢ソウネー｣と諦めたように振り返る。ジョセフはよく頭の悪そうな発言をするが、その実とても賢い。どうにもならない事についてのワガママはあまり言わず、言ったとしても数分後には己を納得させあっけらかんとしている。
そういう所もまたジョセフの魅力だった。
｢なぐられたら言ってね。やっつけてやるから｣
｢え。べつにじぶんでやりかえすし！｣
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作者名：田中 | 作成日時：2021年6月27日 2時
