美しき破壊者 (ページ1)

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一話ページ1

その日は月の輝く夜だった。
『たっ助け(ズシャッ』
殺された男のすぐ傍に、闇に紛れるように立つ1人の
青年が居た。
パチパチパチ
拍手の音に誘われて青年が振り向く。そこにはピエロルックの奇妙な男。拍手をしたのは、どうやら彼のようだった。

『見事な腕前だね♥流石はマフィアの死神といった
ところかな♣』
クックックと喉を鳴らして笑う男。先程の行為を見ていたらしい。こころなしか、その声には喜色が浮かんでいる。
『よければボクと手合わせしないかい？』
男は青年に呼びかける。しかし、青年は聞こえなかったかのようにその場を離れようとしていた。

『無視は酷いな♠流石のボクでも傷つくよ♦』
拗ねたように男が言う。

『すまないな。俺にはお前と話している自由時間は
ないんだ。』

初めて聞いた青年の声。それはどこまでも透き通っていて、耳に心地よいテノール。聴く者の心を落ち着かせる声色だった。

『またいずれ会おう。続きはその時に。』

そう言ってビルから飛び降りる青年。男が屋上から下を覗き込めば、そこに青年の姿は既に無かった。

『あぁ、久しぶりに青い果実を見つけちゃった♥
本当に美味しそうだな♠』
口元を緩ませながら呟く男。

『どこか彼女に似てるんだよねぇ♣』
男の言葉は風に運ばれ、誰にも聞かれることはなかった。