黄色短編集 (ページ33)

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スピカ　　　☆6 ページ33

「モンゴルに行きたいな～。」

ゆっくり、優しく彼を抱きしめながら、彼の耳元で天井を見上げながら言ってみる。

「モンゴル？何で？何、突然。」

「空がとんでもなく広そうだから。」

「空？」

「うん。草原の真ん中にパオ建てて、毎日カズくんと一緒にぼんやりしたい。」

「オレ、やだ。そんなの。」

「私のささやかな夢くらい、黙って聴いてなさい(笑)」

「モンゴルのどこがささやかなんだ(苦笑)」

そんな彼の言葉を無視して、続けて私は思い描く光景を言葉にする。

「草原の真ん中で寝っ転がって、夜空を眺めるんだー。邪魔な灯りなんてないから、満天の星空だよ？邪魔する人も邪魔に思う人も、だーれもいないくらい、だだっ広いところなんだよ？」

いつの間にか私の目は頭上の天井を突き抜けて、その先に広がる夜空を見てる。

「銀河鉄道でもいいなー。」

「それもう、空想の世界だし(苦笑)」

昔見た、アニメの映像が脳裏に広がる。

「・・・・・・・モンゴルも銀河鉄道も遥か遠いな(苦笑)」

「まずもって、カズくんはモンゴルとか無理だね。」

「立場的に、って意味？」

「いや、文明社会じゃないと無理じゃんアナタ。スーパーインドア人間だから。」

「高度な文明人って言ってくれる？不便なとこは無理だなー。トイレも無いんだぞ？草原の真ん中でやるんだぞ？できんの？おまえ(笑)」

笑いながら、私の体をまた抱きしめる。

「・・・・・・でも、」

柔らかい声が私を包む。

「おまえとだったら、そーいうとこも行ってもいいかな。」

口調は笑ってるくせに、抱きしめる腕は切なくなるほど強くって。
他愛も無い戯言が、彼の口から甘い砂糖菓子みたいな言葉を連れ出してきて。

「・・・・・和也？」

「・・・・・どした。珍しく呼び捨てで(笑)」

「何でもない(笑)」

ふいに顔を出した彼の奥の奥をふいに見つめたせいで、実のところ彼のことをどうしようもなく大好きで大好きで大好きな気持ちが粉みたいに飛び出しそうになったのを、何とか抑えた(苦笑)

やだ、泣きそうになっちゃう。大好きすぎて。