【N.K】いつもより近いふたりの距離 ページ21
濃紺の夜の
「────そーだ。」
運転してる和くんが時計を見て、言った。
「行こうと思ってたとこ、あったんだった。」
「行こうと思ってたとこ？」
「そ。そこ寄ってから家に戻る。」
「どこ行くの？」
「ヒミツ。」
そう言って笑った。
着いたところは、高台に立ち並ぶビルの一つ。
駐車場に停めて車を降りると、和くんはスタスタと建物の中へと入って行く。
私も後に付いて行く。
何の迷いもなくどこか目的地へと向かって和くんは歩いてく。
「これ、どこに向かってんの？・・・・っていうか、ここ、どこ？？」
エレベーターに乗ったところで私は尋ねる。
「この前、撮影で使わせてもらったビル。」
「勝手に入っていいの？！」
「普通の複合ビルだけど(笑)」
和くんの指先に押された行先階は、最上階。
「最上階とか、何があるの？？」
「まぁまぁ、細かいことは後で。ほら、着いた。」
また和くんはスタスタと歩いて行き。
廊下から階段へと廻って、今度はその階段を上って行く。
登りきった先にあるドアを開けると、そこはそのビルの屋上だった。
「────屋上なんて、勝手に入っていいの？？？」
「鍵開いてるし。」
「でも・・・・・」
和くんは私の顔見て「ﾌﾟﾌﾟｯ。」と小さく笑った。
「どんだけ心配性(笑)」
「だって！」
「ダイジョーブだって。撮影の時、責任者とかいう人に承諾得てるし。」
「・・・・・そなの？」
「そうなんです(笑)」
そう言いながら、歩いた先の柵に腕を載せてもたれた。
私も並んで同じように柵にもたれかかる。
視線の先には、はるか遠くに海が見えた。
「海が見えるね・・・・・って、あれ？」
「なに？」
「今日ってそういえば、花火あるんじゃなかったっけ。あの海の方で。」
和くんはニヤリと笑って。
「ご名答。」
「・・・・・え？」
「小さくなっちゃうけどさ、こっから花火見えるって話をその撮影の時してて。だから『じゃあここ入ってもいい？』って話してたんだよね。」
携帯をポケットから取り出した和くんは、
「もうすぐ始まるかな。」
二人向こう側を見ながら並ぶ距離が、いつもよりうんと近くて。
私は組んだ腕の中に口元を埋めた。
*
*
*
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羊羽(プロフ) - ebi信号さん» 『消えないで』=『いつまでも記憶していたい』でもあるんじゃないかなー。今目の前の花火も、今日の"アナタ"とのこの時間も『消えないで』。ってことかなと。 (2020年6月6日 16時) (
レス) id: fa910cfdc7 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ebi信号さん» 書（描）きたかった光景がebiちゃんにとりあえず伝わってるっぽいので一安心（読み手代表みたいな扱いw） 『消えないで』は歌詞から。割と歌詞の中のｷｰﾜｰﾄﾞっぽいのでちょいちょい使ったの。 (2020年6月6日 14時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ebi信号さん» ＞シチュも人も全部違うのに、主は同じ気持ち そうそうそう！そういう感じにしたかったの！ｲﾒｰｼﾞ映像だと、主人公の顔は一切映さないヤツだね。でもﾌﾚｰﾑに映り込む主人公の腕とか手はｱｸｾｻﾘｰや着てるものが異なってて、それぞれ違うって分かるヤツ。 (2020年6月6日 14時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - オムニバスつーか、その一瞬を個々で観てるのが不思議で必然。シチュも人も全部違うのに、主は同じ気持ちというか、写真撮って表現出来ない気持ちと一緒に出窓の角に飾る、って感じ。(は？ナニソレw) (2020年6月6日 12時) (レス) id: 5da3552e51 (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - １つ１つ想像すると暑くて熱気な季節なんだけど、なんだろね、yellowgreenとか透き通った酸味な感じ。中坊で初めて花火見た日が鮮明だからかな。手を繋いで、それだけで花火なんかちっとも覚えて無かったな… 個人的には『消えないで』より『記憶したい』かなぁ (2020年6月6日 12時) (レス) id: 5da3552e51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2015年1月8日 14時
